新規事業の社会実装に向け「新市場創出サービス活用ガイドブック」を経産省が公表。専門機関と連携した“外部環境構築”を後押し

経済産業省は2023年5月23日、「新市場創出サービス活用ガイドブック」を作成したことを発表した。同省は新市場を創出しイノベーションを社会実装するには、当該市場に適合した外部環境を構築することが必要だとしている。これを踏まえ同省は、本ガイドブックを普及し、新市場創出サービスの効果的な活用を増加させることで、イノベーションの社会実装を後押ししてきたい考えだ。

新市場創出には「外部環境の構築が必要」との観点からガイドブックを作成

経済産業省によると、近年はイノベーションの方法が変化しているという。これまでの新製品や新サービスの社会実装においては、まずユーザー課題を理解し研究開発と製品化をした後、営業努力というプロセスで進められ、主に自社と顧客の関係を中心とした「市場の内側」に注目することが重要とされてきた。しかし近年は、「ユーザー候補の関心は高まりつつあるが、買ってはくれない」、「規制や基準と適合しないため機能を制限し販売せざるを得ない」、「パートナー企業が参加してくれないためエコシステムが広がらない」といった、社会に根づいた規制・基準・通念などの外部環境である「市場の外側」のマネジメントが必要な場面が増加しているという。

一方で国内企業では、規制・基準や社会的関心といった外部環境のマネジメントスキルが不足傾向であるという。こうした課題を踏まえ経産省は、多くの企業が外部環境の構築経験や知見の不足により、新市場創出の方法が分からない状況にいると考え、外部環境の構築を専門家へ外注する取り組みの促進が必要との仮説を立て検証を行った。

まず同省は、新市場の創出を目指す企業からの依頼に基づき、イノベーションの社会実装に必要な外部環境構築のための専門サービスを「新市場創出サービス」と名付けた。仮説を検証した結果、新市場創出のニーズを確認できたが、「新市場創出サービスの活用についての社内説得が難しい」、「新市場創出サービス提供者との契約は実現したが意思疎通が難しい」といった共通課題も把握したという。こうした背景により同省は、新市場創出サービスの効果的な活用方法や、典型的な失敗例とその回避方法を整理した「新市場サービス活用ガイドブック」を作成したという。

新市場創出に向けた標準的プロセスや、直面しがちな障壁の回避方法などを明示

「新市場創出サービス」とは、「中長期的な社会・経済の流れを利用して、問題設定やストーリーテリング等を通じてステークホルダーの共感・理解を獲得し、協力を募ることで、顧客が目指すイノベーションの社会実装に必要な外部環境の構築を支援するサービス」を指す。主なサービス提供者は、戦略コンサルティング、PR会社、政策コンサルティング、法律事務所、規格策定機関等だ。

経産省は、革新的なプロダクト・サービスの社会実装を目指す企業が、外部環境の構築に必要なスキルを社内で確保できない場合、新市場サービス提供者と契約を結び外部環境を構築することが合理的だとしている。本ガイドブックは、新市場サービスの活用に不慣れな企業が、「連携がうまく行かない」といった「典型的な障壁」を回避し、サービスの効果を高めることを目的に作成された。なお、本ガイドブックにおいて同省は、新市場創出に向けた標準的なプロセスを下記の3つのステップに定義している。

【新市場創出に向けた標準的なプロセス】
●ステップ1:新市場創出の戦略策定
●ステップ2:新市場創出に向けた体制構築
●ステップ3:新市場創出の実行


また、各ステップに必要な取り組みを新市場創出サービス提供者に外注する場合の判断基準や確認事項をまとめるとともに、外注に際し直面しがちな「典型的な障壁」を例示し、その回避方法も記載するなど、実務におけるさまざまな場面を想定した知見が整理されている。
新規事業の社会実装に向け「新市場創出サービス活用ガイドブック」を経産省が公表。専門機関と連携した“外部環境構築”を後押し
同省は、本ガイドブックが多くのプロジェクトに利用されることで、イノベーションの社会実装を後押ししていきたい考えだ。
企業が持続的に成長していくには、新市場創出やイノベーションの社会実装が重要な要素となる。今後、新たな事業を展開していきたい企業にとっては、新市場創出サービスの活用も効果的な方法といえるだろう。本ガイドブックなどを参考に、新市場創出に向け検討を進めてみてはいかがだろうか。