聴覚障がい者への理解促進・環境改善に向け「ツナガル・ブック」をNTTテクノクロスが発行。障がい者社員が執筆し実用的な内容に

NTTテクノクロス株式会社は2023年5月18日、誰もが働きやすい職場づくりに向け、聴覚障がい者との相互理解を図る「ツナガル・ブック」を発行し、同社のホームページにて公開したことを発表した。本ガイドブックは、同社に勤める聴覚障がい者が執筆に携わったとのことだ。同社は「多様な個性が輝く会社」の実現に向け、取り組みを推進していく方針だ。

聴覚障がいのある従業員が「ツナガル・ブック」を執筆。当事者目線の内容に

NTTテクノクロスは、「ダイバーシティ&インクルージョン」を重要な経営戦略の一つに位置づけ、従業員一人ひとりが自分らしく生き生きと働き、「多様な個性が輝く会社」を実現するべく取り組みを推進している。同社はこれまでも、聴覚障がいのある従業員コミュニティ(デフコミュニティ)の開設や、会議・打ち合わせ時の自動の文字起こし(トランスクリプション)および副チャットを活用し、聴覚障がいのある従業員を支援してきた実績があるという。

今般発行した「ツナガル・ブックTM」は、聴覚障がいへの理解促進および職場環境の改善に向け、相互理解を図るべく社内利用を目的に作成したものだという。しかし今回、聴覚障がい者が社会で安心して働ける一助とするとの願いから、社内利用にとどめず、社外公開することを決めたとのことだ。なお、「ツナガル・ブックTM」は同社に勤める聴覚障がいのある従業員が執筆しており、聴覚障がい者と仕事をする上でのノウハウに加え、当事者が抱える心理状況も解説されている。例えば、「聴覚障がい者とともに働く時の配慮」に関する下記の9項目については、聴覚障がい者が円滑に仕事をしていく上でお願いしたい点としてまとめられたものだ。

【聴覚障がい者とともに働く時の配慮】
1.仕事上のやり取りはできるだけ文字でのフォローもしてほしい
2.チームに向けての情報は必ず共有してほしい
3.電話を頼むときは本人の意向を確認してほしい
4.チーム全員に発言をお願いするときはなるべく後に回してほしい
5.仕事に関する話は聴覚障がい者本人に話してほしい
6.対面での会議時も可能な限りチャットなどを併用してほしい
7.オンライン会議でも口の読み取り・聞き取りを過信しないでほしい
8.研修などの時は通訳・字幕のサポートをしてほしい
9.緊急時の対策を取り決めてほしい


さらに、従業員個々の障がい状況を把握し円滑なコミュニケーションを築きたい際に活用できる「ツナガル・シート」の作成を提案するなど、職場への理解・定着に向け実用的な内容となっている。同社は、企業で働く人々が障がいについて知ることや、聴覚障がい者の職場定着に向け「ツナガル・ブックTM」を活用してほしいとしている。
企業においては、毎年6月1日現在の自社の障がい者雇用状況報告を行うことが義務付けられている。さらに2024年4月以降、民間企業における障がい者の法定雇用率が引き上げとなるため、障がい者採用の推進が急務だ。一方で、採用が形骸化しており、社内人材の相互理解につながっていない課題を抱える企業もあると考えられる。自社で働く聴覚障がい者に適切な支援を行い、安心して働ける環境の整備を進めるために、本ガイドブックを活用してみてはいかがだろうか。