世界初、人的資本情報開示の国際基準「ISO30414」の保証をNI+Cが取得。評価に至った人事・人材管理分野の取り組みとは

NTTグループの日本情報通信株式会社(以下、NI+C)は2023年5月10日、人的資本の情報開示の国際的ガイドラインである「ISO30414」の保証を取得したことを発表した。あわせて、NI+Cの人的資本に関する情報開示をまとめた「The Human Capital Report 2022」を公開した。同社は、今後も人的資本の強化や拡充を基本にサステナブルな社会の実現に貢献していきたいとしている。

人事および人材管理分野における優れた取り組みが評価

NI+Cはこれまで、「ハピネス経営」を掲げ、「社員の幸せ、お客様の幸せ、社会の幸せ」を目標に事業を展開してきた。人的資本は企業の付加価値の源泉であるとの考えに基づき、「働きやすい環境」と「働き甲斐」との両方の実現を目指し、リモートワークやフレックスタイムを導入するなど、誰もが働きやすい就労環境を整備しているという。加えて、健康経営の推進や職場における良好な人間関係・チームワークの構築、リスキリングなどを通じた一人ひとりのスキルアップ、企業パーパスの再認識と「幸せ行動規範」の浸透も図っているとのことだ。これらの取り組みに際しては、定期的な従業員サーベイや健康面、エンゲージメントチェックなどを行い、その結果をもって課題改善に取り組んできたという。

今回同社が取得した「SRA準則(AA1000)」(※)は、英国の国際的なNGO「Sustainability Reporting Assurance(持続可能性報告保証)」が発行する国際基準だ。なお、同社による「ISO30414」保証取得は、グローバルで初めての事例となった。今回の同保証取得が可能となった要因は、同社における人事・人材管理分野における優れた取り組みが評価されたことにあるという。同社は、今回の保証取得に際し、エビデンスベースの確認や網羅性の担保、Gap分析などを実施し、保証プロセスを通じて「開示内容の信頼性や透明性をより高めることができたとしている。

規格開発のサポートを含め規格に関するサービスを展開するBSIグループジャパン株式会社・代表取締役社長の漆原将樹氏は、「NI+Cの今回のチャレンジは、まさに“人”を中心にした考えのもと、テクノロジーでサステナブルな社会に貢献する上で、非常に価値のあるもの」との見解を示している。

※SRA準則(AA1000):企業責任や持続可能な開発などの課題に取り組む英国の国際的なNGO組織である「AccountAbility」が発行している国際基準。人的資本にかかわらず、不正防止などのガバナンスから、環境・ESGに関連するすべての取得データを対象とした監査・保証を行う。AA1000とは、同機関がサステナビリティレポートを中立的な立場で監査し、顧客およびステークホルダーに対する組織の取り組みおよび公開された環境・社会・ガバナンスなどの情報の正確性を証明する国際規格。
人的資本経営に注目が集まる中、徐々に国際的基準である「ISO30414」を取得する企業の動きも広がりつつある。また規格や保証の取得に際しては、人的資本の情報の信頼性や透明性がポイントであるようだ。今後、国際規格や保証を取得していきたい企業は、こうした先行事例を参考に、人的資本経営の在り方を検討していくのがよいだろう。