グループ8社で「産後パパ育休」を“100%有給化”の野村不動産HD。男女問わず社員が継続的に育児参加できる環境を整備

野村不動産ホールディングス株式会社は2023年4月4日、野村不動産グループ8社において「産後パパ育休(出生時育児休業)」を利用する社員の休業取得日数のうち、最大28日間を有給化したことを発表した。同社は、グループのサステナビリティポリシーにおいて定めた「ダイバーシティ&インクルージョン推進方針」に則り、今後も多様な社員が自分らしく安心して育児に取り組める環境整備に努めていく方針だ。

休業前の手取り賃金額の100%保障で、休業中の経済的不安の緩和につなげる

野村不動産グループは、「人と人がお互いを支えつながりあう、誰ひとり取り残さない社会」および「背景や価値観の異なる人々が個性を活かし合う創造的な社会」の実現を同グループのサステナビリティポリシーに掲げている。また、2022年9月末には「野村不動産グループ ダイバーシティ&インクルージョン推進方針」を策定。その中で、2024年3月期末に向けたキーゴールの一つとして「男女育児休業取得率100%」を掲げ、2030年に向けたロードマップを定めるなど、男女の育児休業取得を促進しているという。

同グループは育児支援について、「一時的なものではなく、仕事と両立して継続していくものであり、男性・女性ともに継続的に育児しやすい環境の整備が必要である」との考えを示している。この考えのもと、同グループで働く従業員が休業期間中の経済的不安を理由に育児休業の取得判断に迷うことのないよう、今回「産後パパ育休」の有給化を決定したという。

「産後パパ育休」は、改正育児・介護休業法により2022年10月から施行された「出生時育児休業」の通称で、制度開始後から高い関心が寄せられている。これは、子の出生後8週間以内に4週間まで、2回に分割して取得できるという育児休業制度で、男性の育児休業取得を促進する目的を持つものだ。

同グループでは2023年3月まで、社員が「産後パパ育休」を取得した場合、雇用保険給付の育児休業給付金(育児休業給付金の給付率:休業前賃金の67%)を活用してきた。しかし、2023年4月より、出産後8週間のうちの4週間における育児休業取得に対し、休業前賃金の手取り額の100%を保障する最大28日間を有給化した。

なお、有給化を決定したグループ8社は下記の通り。

●野村不動産ホールディングス株式会社
●野村不動産株式会社
●野村府相談投資顧問株式会社
●野村不動産ソリューションズ株式会社
●野村不動産パートナーズ株式会社
●野村不動産ウェルネス株式会社
●野村不動産アメニティサービス株式会社
●株式会社ファーストリビングアシスタンス


今回の制度変更について同グループは、休業中も通常の給与支給となることで、育児休業取得による経済的不安の軽減につながるとしている。

ダイバーシティ&インクルージョンの推進に向け、3つの休暇制度も新設

さらに同グループでは、ダイバーシティ&インクルージョン推進方針における「従業員一人ひとりの違いに着目した、実質的な機会均等を実現」との宣言に基づき、育児理由に限らず従業員がワーク・ライフを両立できる環境づくりのため、2023年4月より下記の休暇制度も新設した。

1.積立有給休暇制度
付与後2年で消滅する年次有給休暇を最大90日まで積み立てることができる制度。病気の療養、介護・看護、育児、社会貢献活動等の事由に対して、積み立てた休暇を利用でき、年次有給休暇とあわせ計画的な休暇取得を可能にする。

2.エフ休暇
女性特有の体調不良の際に、月1回取得できる特別休暇。取得事由を生理日に制限せず、不妊治療や更年期による体調不良まで拡充。休暇名称を「エフ休暇」(「エフ」はFemaleの頭文字)とし、取得事由を拡充することで取得のしづらさに対し配慮する。

3.バース休暇
子の出産直前から産後一定の期間に取得できる5日間の特別休暇を年次有給休暇とは別途に付与する。


また同グループは、2022年12月よりグループ13社で「イクボス企業同盟」(※)に加盟。休暇制度の拡充支援のみならず、上司の意識改革も重要であると捉えていることから、部下のキャリアと人生を応援しながら、組織力向上に向けた上司育成にも注力しているという。

同社はこれらの制度導入で、職場の協力体制構築、性別役割分担意識の変化ならびに他社理解の文化醸成など、社員が働く環境により良い変化と波及効果をもたらすと期待を寄せている。今後も同グループでは、サステナビリティポリシーにおいて掲げた方針の実現に向け、2030年までの優先課題の一つとしてダイバーシティ&インクルージョンを推進していく方針だ。

※イクボス企業同盟:部下のキャリアと人生を応援しながら、組織の業績や結果を出せる上司育成(イクボス)の必要性を認識し、積極的に自社の管理職の意識改革を行うとともに、新しい時代の理想の上司の育成に取り組む企業のネットワーク
女性の活躍を推進していくにあたり、男性の育児参画は欠かせない要素といえるだろう。一方で、経済的不安や職場理解などによる取得のしづらさなど、男性の育休取得には課題も多い。本制度は有給での休業が可能となることから、経済的不安の解消につながる取り組みとして好事例といえそうだ。それぞれの企業において、男性の育児休業取得促進に向けた取り組みが波及していくことを期待したい。