4割の会社員が「リスキリング経験」を持つも、勤務時間内の取り組みは少数。若手社員ほど必要性を実感か

株式会社マイナビは2023年3月7日、「正社員のリスキリング実態調査(2023)」の結果を発表した。調査期間は2023年1月6日~8日で、20~59歳の正社員800名(各年代200名ずつ)から回答を得た。調査結果では、リスキリングの経験の有無のほか、リスキリング後の変化などの実態が明らかとなった。

ビジネスパーソンの4割以上がリスキリングの経験あり

リスキリングとは「新たな職業に就くため、あるいは今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために必要なスキルを獲得すること」を言う。政府が、従業員のリスキリングを推進する企業に対して助成金を拡充することを公表しているが、実際にリスキリングに取り組んだことのあるビジネスパーソンはどの程度いるのだろうか。

マイナビはまず、「リスキリングをしたことがあるか」と尋ねた。最多となったのは、「したことはない」の55.3%で、半数以上のビジネスパーソンはリスキリング未経験であることがわかった。一方で、リスキリングの経験がある人の内訳は、「現在している/プライベートの時間のみ」が13.9%、「現在している/勤務時間のみ」が8.6%、「過去にしていた/プライベートの時間のみ」が23.5%、「過去にしていた/勤務時間のみ」が7.8%となった。現在もしくは過去にリスキリングの経験がある人で、勤務時間を使ったという人はどちらも1割前後で少数派となっていた。
4割の会社員が「リスキリング経験」を持つも、勤務時間内の取り組みは少数。若手社員ほど必要性を実感か

リスキリング経験者のほうがよりポジティブなイメージを抱く

次に同社が、「リスキリングにどのようなイメージがあるか」を尋ねたところ、トップは「仕事や働き方の選択肢が広がる」で49.3%が回答。2位以降は、「転職しやすくなる/やりたい仕事に挑戦できる」が40%、「達成感を得られる/自信がつく」が29.3%と続いた。4位まではリスキリング対するポジティブなイメージを持つ回答が並んだ一方で、5位には「お金がかかる」や「どのようなスキルを身につければよいかわからない」(同率24.1%)といった回答が並び、ネガティブな印象を持つ人もいることがうかがえる。
4割の会社員が「リスキリング経験」を持つも、勤務時間内の取り組みは少数。若手社員ほど必要性を実感か
さらに、同社はこの結果について「リスキリングの経験者と未経験者」の回答結果を比較したところ、リスキリングの経験有無で大きく差が開いた項目があった。経験者の方が高かった項目は、「達成感を得られる/自信がつく」は経験者:42.2%/未経験者:18.8%(23.4ポイントの差)、「効率化や生産性向上につながる」は経験者:27.7%/未経験者:14.3%(13.4ポイントの差)、「人の役にたてるようになる」は経験者:20.7%/未経験者:11.3%(9.4ポイントの差)となった。全体的な傾向として、リスキリング経験者の方がポジティブな印象を持っており、身に付けたスキルが業務で活かせていると実感できるシーンが多いと推測できる。
4割の会社員が「リスキリング経験」を持つも、勤務時間内の取り組みは少数。若手社員ほど必要性を実感か

8割弱が「リスキリングの必要性」を実感。若年層ほど必要性を感じる傾向も

また同社が、「今の自分に、リスキリングは必要だと思うか」を尋ねたところ、全体では「とてもそう思う」(21.1%)と「ややそう思う」(58.5%)の回答が計79.6%となり、リスキリングの必要性を感じている人は8割近くとなった。年代別にみると、20代では「とてもそう思う」が27%と他年代に比べて高く、若年層ほどスキルアップの必要性を感じていることがうかがえる。
4割の会社員が「リスキリング経験」を持つも、勤務時間内の取り組みは少数。若手社員ほど必要性を実感か

リスキリング後、「昇給」や「昇進・昇格」につながったとの回答は少数に

次に、同社は「リスキリング後の変化」について尋ねた。すると、トップは「資格の取得ができた」が26.8%で最も多かった。以降は、「時間の確保やコストの確保が大変だった」(18.4%)、「身に付けたスキルを生かせていない」(16.8%)となり、ネガティブ要素の強い回答が2位と3位に続いた。他方で、「昇給した」(11.2%)、「昇進・昇格した」(6.4%)など、「成果につながった」とのポジティブな要素の回答は少なく、実利的な還元には至っていない状況が垣間見えた。
4割の会社員が「リスキリング経験」を持つも、勤務時間内の取り組みは少数。若手社員ほど必要性を実感か

勤務先に求める制度は「学習費用を会社が負担してくれる制度」が最多に

最後に同社は、「勤務先にあると魅力に感じる制度」について尋ねたところ、上位は「学習費用を会社が負担してくれる制度」(51.8%)、「取得した資格に応じて手当が出るなど、賃金に還元される制度」(49.9%)、「就業時間内にリスキリング(学習)を実施していい制度」(39.4%)となった。
4割の会社員が「リスキリング経験」を持つも、勤務時間内の取り組みは少数。若手社員ほど必要性を実感か
本調査結果では、ビジネスパーソンの約8割がリスキリングの必要性を感じ、特に若手ほどその意識が高いことがわかった。また、リスキリングにより「仕事の幅が広がる」など、ポジティブなイメージを持つ人が多い一方で、実際に昇給や昇格につながった人は少数派となっていた。企業がリスキリングを推進するにあたっては、従業員の意欲を会社が後押しできるような環境を整備し、業績向上につなげていく制度設計が求められそうだ。