「DX」の定義を正しく理解しているビジネスパーソンは2割未満。大半はデジタル関連のリスキリングも進展せず

トレノケートホールディングス株式会社は2022年12月20日、「DXの理解度に関する調査」の結果を発表した。調査期間は2022年11月17日~18日で、全国の20代~50代のビジネスパーソン588名から回答を得た。調査から、企業現場における「DXの正しい定義」の浸透度や、働く人が備えているデジタルスキルとリスキリングの実態が明らかとなった。

約4割が「DXの正しい定義がわからない」と答える

経済産業省の「デジタルガバナンス・コード2.0」では、DXの定義を「企業がビジネス環境の変化に対応し、デジタル技術を活用して、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務や組織・プロセス・企業風土等を変革し、競争上の優位性を確立すること」としている。では、実際に企業で働くビジネスパーソンは、DXをどの程度理解しているのだろうか。

同社が、「DXの定義として、自身の考えに近いもの」を尋ねたところ、「企業がデジタル技術を活用してビジネスや組織を変革すること」が19%と、DXの定義を正しく理解している人は2割を下回っていることがわかった。最も多かった回答が「わからない」(38.8%)だったことからも、DXの定義まで正しく理解している人は少数派のようだ。
「DX」の定義を正しく理解しているビジネスパーソンは2割未満。大半はデジタル関連のリスキリングも進展せず

「DX実現のイメージ」は、自社でのDXの進み具合により相違

同社によると、「自社でDXに取り組んでおり、それが成功している」と回答した人は約8割だったという。

次に、同社は「『企業がDXを実現した』と聞いたときに、その企業が行ったこととして自身のイメージに最も近いもの」を聞いた。この回答結果を、自社のDXに「成功している人」と「成功していない人」に分けてまとめた。すると、「成功している」としたグループでは、トップが「これまで紙で処理していた書類を電子で決済や承認ができるようにした」(54.1%)で過半数が回答。以下には、「リモートワークを実現した」が31.1%、「オンライン会議を導入した」が26.2%と続いた。

一方、「成功していない」としたグループでは、最多は「RPAを利用して定型業務を効率化した」(47.1%)だった。以下、「リモートワークを実現した」が41.2%、「全社でデータ分析ができる体制や整備を整えた」が29.4%と続いた。「自社のDXが成功している」と考えているグループでは、多くが電子化やツールの導入などDXの初期段階である項目を選択していた。それに対し、「成功していない」と考えているグループの方が、比較的DXの達成段階の取り組みに回答が集まっている傾向にあった。
「DX」の定義を正しく理解しているビジネスパーソンは2割未満。大半はデジタル関連のリスキリングも進展せず

「DXについて既に学んでいる」のはわずか1割未満

続いて同社は、「DXについて学びたいか」を尋ねた。すると、「学びたいと思っていない」が44.9%、「学びたいと思っているが、学ぶ予定がない」が41.7%となり、これらを合わせた“学ぶ予定がない人”は計86.6%となった。
「DX」の定義を正しく理解しているビジネスパーソンは2割未満。大半はデジタル関連のリスキリングも進展せず

“学ぶ予定がない”と答えた人の理由とは?

さらに、同社は「学ぶ予定がない」と答えた人に「その理由」を尋ねた。その結果、最多となった回答は「何を学べばよいかわからない」で47.2%となった。以下、「学ぶところを知らない」が39.3%、「学んだ後でどう活かせばいいかわからない」が24.2%、「DXに関する知識が自分に必要だと思わない」が17.5%と続いた。
「DX」の定義を正しく理解しているビジネスパーソンは2割未満。大半はデジタル関連のリスキリングも進展せず

「セキュリティの基礎知識」の取得でとどまっている実態が明らかに

次に、同社は「回答者自身が既に身につけているデジタル関連の能力・知識」について尋ねた。すると、「セキュリティの基礎知識」が20.7%で最も多かった。以下、「データの意味を読み取り、説明する能力」が11.9%、「IT活用の際のモラル・コンプライアンスに関する知識」が11.6%と続いた。2位以下は、いずれの項目も1割前後で、企業で働く個人のデジタルスキルは高まっていない実態がうかがえる。
「DX」の定義を正しく理解しているビジネスパーソンは2割未満。大半はデジタル関連のリスキリングも進展せず
本調査から、現場で働くビジネスパーソンには、政府が示す「DXの定義」が十分に浸透しておらず、リスキリングも進んでいない状況が明らかとなった。また、DXの推進・実行に必要となるデジタルスキルについても「何を学べばよいかわからない」という人が多いようだ。今回の調査結果を受け、企業側は自社の状況も確認しておく必要がありそうだ。