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【社長の年金】第16回:年金に「配偶者の割り増し」が付かない? 経営者が見落としていることとは(前編)

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老後に受け取る年金は、年金制度への加入実績に応じて額が決定されるのが原則である。ただし、扶養する配偶者がいる場合には、年金額を割り増す仕組みも用意されている。ところが、現実には「年金に割り増しが付くと思っていたのに、付いていない」との声が少なくない。そこで、今回から2回にわたり、老後の年金に「配偶者の割り増し」が付く仕組みを整理してみよう。

家族構成を考慮して決定される老後の年金額

日本の年金制度では、年金を受け取る人に養っている家族がいる場合には、経済的負担の大きさを鑑みて「通常よりも割り増した年金」を受け取れる仕組みが用意されている。例えば、老後の年金を受け取る人に扶養する配偶者がいると、「配偶者加給年金額」という名称の割り増しが最大で年間38万8,900円、上乗せされることがある。配偶者を養っていることにより、老後の年金が40万円近くも増額されるわけである。

しかしながら、老後の年金に付く配偶者加給年金額は、配偶者がいれば必ず受け取れるわけではない。残念ながら、上乗せされる場合とされない場合があるのだ。

経営者仲間で年金談議に花を咲かせていると、他の社長の年金には配偶者加給年金額による割り増しが付いているのに、自分の年金には同様の割り増しが付いていないことに気付くことがある。そのようなときは、得てして「年金事務所が事務処理を誤ったのではないか」などと考えがちである。

わが国の年金行政が過去に犯した不祥事を考えれば、そのように思いたくなるのも致し方ないが、ほとんどの場合は「配偶者の割り増しが付く条件を、自分自身が満たしていない」というのがその理由のようだ。

老後の年金に配偶者の割り増しが付かない具体的な事例を以下で紹介しよう。

【ケース1】個人で事業を営んでいる場合

1つ目のケースは「自身の職場を会社形態にしていない場合」である。

例えば、学校を卒業後、フリーランスとして経験を積んだ後に、自身の個人事務所を立ち上げて運営をしている経営者がいるとする。年金には40年間加入し、保険料はもれなく納めている。

ところが、この経営者が受け取る老後の年金に、扶養する配偶者がいることによる割り増しが付くことはない。理由は、厚生年金に加入したことがないからだ。

老後の年金に配偶者の割り増しが付くのは、厚生年金の老後の年金である「老齢厚生年金」のみである。フリーランスや個人で事務所を経営する人は国民年金に加入しており、厚生年金に加入することがない。そのため、受け取れる老後の年金は、国民年金の「老齢基礎年金」のみとなる。「老齢基礎年金」には配偶者の割り増しは付かないため、このケースでは支給される年金額が増額されることはないのである。

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