“経営者に求められる資質”の1位は「本質を見抜く力」。経営者となるためのトレーニングを受けていない人は6割超に

一般社団法人日本能率協会(以下、JMA)は2022年12月7日、「トップマネジメント意識調査2022」の結果を発表した。調査期間は2022年7月14日~10月26日で、調査期間内に同社が主催した研修への受講者278名から回答を得た。調査から、これからの経営者に求められる資質や、関心度の高い今後の経営戦略などが明らかとなった。

これからの経営者に求められる資質は「本質を見抜く力」がトップ

変化の激しい時代とされる今、これからの経営者に求められる資質とはどのようなものなのだろうか。まず、JMAが「これからの経営者に求められる資質として、特に重要であると思うもの」を尋ねると、「本質を見抜く力」が41.4%で最多だった。以下、「変化への柔軟性」が37.4%、「イノベーションの気概」が24.8%と続いた。

また、「これからの経営者に求められる資質として、自身の強みであると思うもの」を尋ねると、「変化への柔軟性」が34.5%で最も多かった。以下、「本質を見抜く力」と「情熱」がともに18.7%、「人心掌握力」が12.6%と続いた。

「重視するもの」と「自身の強み」の回答を比べると、「本質を見抜く力」の割合は「重視」に対し「強み」が22.7ポイント低く、「イノベーションの気概」の割合も「重視」に対し「強み」が15.4ポイント低かった。「本質を見抜く力」と「イノベーションの気概」においては、経営者の資質として重要視しつつも、自身の「強み」としては認識していない人が多いことがうかがえる。
“経営者に求められる資質”の1位は「本質を見抜く力」。経営者となるためのトレーニングを受けていない人は6割超に

現職への就任を打診された際に「準備ができていた」とする回答は4割

次に同社は、「現在の役職への就任を打診された時点で、必要なスキルやマインド等の準備ができていたか」と尋ねた。すると、「十分に準備ができていた」が6.8%、「ある程度の準備ができていた」が33.8%で、「準備ができていた」とする回答の合計は40.6%だった。一方で、「まったく準備ができていなかった」は9.7%、「あまり準備ができていなかった」は24.8%で、「準備ができていなかった」との回答の合計は34.5%となった。
“経営者に求められる資質”の1位は「本質を見抜く力」。経営者となるためのトレーニングを受けていない人は6割超に

もっと身に付けておきたかったスキルは「会社法・税法などの法律知識」が7割

続いて、同社が「経営者に必要な知識やスキルとして、もっと身につけておけば良かったもの」を尋ねると、「会社法・税法などに関する法律知識」が71.6%で最多となった。以下、「財務・会計に関する知識」が69.1%、「外国語によるコミュニケーション能力」が62.2%と続いた。

また、「経営者に必要な知識やスキルとして、既に身につけているもの」を尋ねると、「リーダーシップに関するスキル」が59.7%で最も多かった。以下、「プレゼンテーションスキル」が52.2%、「コーチングスキル」が45%と続いた。

両質問の回答を比較すると、「会社法・税法などの法律知識」に関しては、71.6%が「身に付けておきたかった」とするものの、「既に身に付けている」とする回答は11.9%にとどまり、その差は59.7ポイントだった。また、「財務・会計に関する知識」も、両回答の差は49.3ポイントで、乖離が大きいことがわかった。
“経営者に求められる資質”の1位は「本質を見抜く力」。経営者となるためのトレーニングを受けていない人は6割超に

6割が経営者となるためのトレーニングを「受けていない」と回答

さらに、同社は「これまでに経営者となるためのトレーニングを受けてきたか」を尋ねた。すると、「十分に受けてきた」は2.2%、「ある程度受けて来た」は35.6%で、「受けてきた」とする回答の合計は37.8%だった。他方で、「まったく受けていない」は14.7%、「あまり受けていない」は46.8%で、「受けていない」との回答の合計は61.5%となった。
“経営者に求められる資質”の1位は「本質を見抜く力」。経営者となるためのトレーニングを受けていない人は6割超に

関心度合いが最も高い経営戦略は「デジタル技術の活用、DXの推進」

最後に同社は、「今後の経営戦略に影響すると想定される項目についての関心度合い」を尋ねた。すると、「大いに関心がある」とする項目は「デジタル技術の活用、DXの推進」が63.3%で最も多かった。以下、「人的資本経営の推進、組織能力・人材の強化」が63.3%、「テクノロジー動向の把握と対処」が56.5%と続いた。
“経営者に求められる資質”の1位は「本質を見抜く力」。経営者となるためのトレーニングを受けていない人は6割超に
本調査から、「経営者に求められる資質」と「自身の強み」、「身に付けておきたかったスキル」と「習得済みのスキル」のどちらにも差があることが明らかとなった。しかし、計画的に経営幹部を育成し、必須の経営知識を習得する機会はあまり持たれていないのが実態のようだ。今後、関心度合いが高い「デジタル活用・DX推進」を効果的に進めていく上では、経営者育成の体系的な整備が必要なのかもしれない。