「自然災害発生時のBCP」は6割以上の企業が“策定済み”。一方で「人材不足・専門知識不足」を課題視する声も

一般社団法人日本能率協会(以下、JMA)は、企業経営者を対象に実施した「2022年度(第43回)当面する企業経営課題に関する調査」の中から、第4弾として「BCPについて」の結果を発表した。調査期間は2022年7月22日~8月19日で、JMAの法人会員ならびに評議会会員および、サンプル抽出した全国主要企業の経営者689名から回答を得た。調査から企業のBCP策定状況や、策定における課題などが明らかとなった。

最もBCP策定が進む項目は「自然災害」。地政学リスクは「策定済み」が1割以下に

BCPとは「事業継続計画」のことで、企業が自然災害や大火災、テロ攻撃などの緊急事態に遭遇した場合に、事業の継続・早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や手段などを取り決めておく計画を指す。新型コロナウイルス感染症拡大や海外での戦争などの影響から、企業には柔軟な対応が求められているが、BCPの策定状況はどうなのだろうか。

JMAはまず、「巨大地震・台風などの自然災害」「感染症・パンデミック」「サイバーテロなどの情報セキュリティ」「サプライチェーンの毀損」「急激な為替変動」「紛争・戦争等の地政学リスク」の6項目について、「BCPの取り組み状況」を尋ねた。すると、全体で「計画策定済み」の割合が最も多かったのは、「巨大地震・台風などの自然災害」で61.4%だった。同項目に関しては、BCPを未策定の企業でも、「計画策定中」が17.1%、「これから検討する」が17.3%だった。また、自然災害に対するBCPの策定を「取り組む予定なし」とした企業の割合がわずか3%にとどまったことからも、6つのリスクの中で最も策定が進んでいる項目であることがうかがえる。

「大企業」、「中堅企業」、「中小企業」の企業規模別でみても、自然災害時のBCPを「計画策定済み」とする回答の割合が6項目中で最も高い割合となった。しかし内訳をみると、「大企業」が80%、「中堅企業」が65.9%、「中小企業」が43.5%と、企業規模が小さくなるほどほど割合が低くなる傾向が明らかとなった。

他方で、「紛争・戦争等の地政学リスク」の項目では、「計画策定済み」とする回答は全体で8.7%だった。企業規模別でみても、「大企業」で15.9%、「中堅企業」で9.9%、「中小企業」で2.6%と、6項目の中で割合が最も低かった。
「自然災害発生時のBCP」は6割以上の企業が“策定済み”。一方で「人材不足・専門知識不足」を課題視する声も

約6割がBCP策定に関して「担当人材の不足」を課題視。「専門知識・情報の不足」も上位に

次に同社が「BCPに取り組む上での課題」を尋ねると、「担当する人材が不足していること」が57.8%で最多だった。以下、「取り組むための専門知識・情報が不足していること」が47.3%、「顧客や取引先を巻き込んだ取り組みができていないこと」が29.8%と続いた。

企業規模別でみても、大企業、中堅企業、中小企業でそれぞれ最も多かったのは「担当する人材が不足していること」(大企業:51%、中堅:61.8%、中小:56.5%)だった。
「自然災害発生時のBCP」は6割以上の企業が“策定済み”。一方で「人材不足・専門知識不足」を課題視する声も
本調査から、自然災害時のBCPに関し、6割以上の企業が策定済みであることがわかった。一方で、中堅企業や中小企業は、大企業と比較して策定率が低い傾向にあることも明らかとなった。自然災害以外にも、感染症やサイバーテロなど、企業はさまざまなリスクに曝されるが、人材・専門知識不足などの課題から思うように策定が進まない状況があると言えそうだ。現在は大企業において取り組みが先行しているが、今後は中堅・中小企業についても、BCPの策定がより進むことが期待される。