大企業の4割が“スタートアップとの協業”を進行中。「新規事業開発」と「オープンイノベーション創出」に強い期待

一般社団法人日本能率協会(以下、JMA)は2022年11月14日、「スタートアップ企業との協業についての取り組み」についての調査結果を抜粋して発表した。調査は2022年7月22日~8月19日に実施され、JMAの法人会員ならびに評議員会社、全国主要企業の経営者など計5,000社から回答を得たもの。ここでは、発表を元にスタートアップ企業との協業実態について、企業規模別の考察を交えて紹介する。

“スタートアップとの協業”は大企業が先行しており4割が進行中

(注)JMAは、本調査における企業規模を以下のように分類している。
・大企業:従業員数3,000人以上
・中堅企業:従業員数300人以上~3,000人未満
・中小企業:従業員数300人未満

新たなイノベーション創出を目指す手立てとして、スタートアップ企業との協業が注目され、政府によるスタートアップ支援も強化されている。では、企業の取り組み実態はどうなのだろうか。JMAはまず、「スタートアップ企業との協業・支援・交流関係」を尋ねた。すると全体では、「協業している」は19.4%と2割未満だった。また、「協業はしていないが支援・交流している」は11.6%、「検討中」は17.1%、「協業・支援・交流しておらず、検討もしていない」は51.2%となった。

企業規模別にみると、大企業では40%が「協業している」と回答したのに対して、中堅・中小企業での回答はそれぞれ2割を下回った(中堅:17.2%、中小:9.6%)。また、「協業・支援・交流しておらず、検討もしていない」と回答したのはそれぞれ約6割だった(中堅:57%、中小:60%)。

この結果を業種別にみると「協業している」は「製造業」で13.2%、「非製造業」で23.7%となり、非製造業の方がやや協業が進んでいる状況のようだ。なお、JMAによると「協業・支援・交流の内容」は、「技術提供・技術交流」がトップだったという。
大企業の4割が“スタートアップとの協業”を進行中。「新規事業開発」と「オープンイノベーション創出」に強い期待

協業のきっかけは「経営者や幹部の人脈」が最多

次に、「協業」または「支援・交流している」、「検討中」であると回答した企業に対し、「交流のきっかけ」を同社が尋ねると、「経営者や幹部の人脈」が51.2%で最多となった。以降は、「金融機関を通じて」が37.7%、「取引先を通じて」が34.3%と続いた。

企業規模別に見た特徴は、大企業が「スタートアップとの接点づくりのための交流会」(32.7%)や「専門コンサルタントを通じて」(25.2%)が全体より高くなっていた。い一方、中小企業は「経営者や幹部の人脈」が63.3%と過半数を占めた。
大企業の4割が“スタートアップとの協業”を進行中。「新規事業開発」と「オープンイノベーション創出」に強い期待

大企業ほど協業目的として「新規事業開発」を重視している

続いて、同社は「スタートアップ企業との協業・支援・交流理由」を尋ねた。すると、全体結果のトップは「新規事業開発」で66.6%が回答。以下、「自社にない先進技術の獲得」が53.3%、「既存事業の強化」が46.1%と続いた。

企業規模別にみた特徴では、大企業は「オープンイノベーションの推進」が56.1%と、全体平均よりも15.7ポイント高くなっていた。

一方で、中小企業では、「既存事業の強化」(46.7%)や「販路拡大」(34.4%)が、全体平均を上回っていた。
大企業の4割が“スタートアップとの協業”を進行中。「新規事業開発」と「オープンイノベーション創出」に強い期待

協業を決めるポイントは「目的・ビジョンの一致」がトップ

最後に、「スタートアップとの協業を適切に推進するためのポイント」を同社が尋ねたところ、全体のトップは「お互いの目的・ビジョンの一致」が71.1%となった。以下、「経営戦略との連動」が47.6%、「求める成果・目標の明確化」が46.3%と続いた。

企業規模別にみると、中堅・中小企業では、全体平均と大きな差はみられなかった。大企業では「経営戦略との連動」(62.8%)と「事業スピードの加速化」(38.6%)が他と比べて抜きん出る結果となっていた。
大企業の4割が“スタートアップとの協業”を進行中。「新規事業開発」と「オープンイノベーション創出」に強い期待
「スタートアップ支援」が政府の成長戦略に位置づけられていることもあり、大企業の過半数が協業の取り組みを進めていた。一方で、中堅・中小の取り組みは、まだまだ遅れがあるようだ。協業することで、既存事業を活かしたイノベーション創出の可能性が高まるケースもあるだろう。持続的成長を見据えた、新たな方針として検討してみてはいかがだろうか。