大企業退職者の本音から上司・部下間の「コミュニケーション不足」が浮き彫りに。エンゲージメント低下や退職の要因とは?

株式会社かんき出版は2022年9月15日、「大企業退職者の本音調査」の結果を発表した。調査期間は2022年8月24日~25日で、従業員数1,000名以上の大企業を退職した“中核人材”(MVP・社内表彰経験のある人)106名から回答を得た。調査での回答結果およびフリーコメント等から、エンゲージメント低下と退職との関係や、大企業を退職する決め手となった要因などがわかった。

愛着・エンゲージメントが低下した要因の1位は「上司との関わりへの不満」

従業員のモチベーション低下による退職は、業界を問わず企業の課題の一つだと考えられるが、モチベーション低下にはどのような要因があるのだろうか。かんき出版はまず、「退職した勤務先に対する愛着・エンゲージメントが下がった要因」を尋ねた。すると、「上司との関わりに不満があった」が47.2%で最も多かった。以下、「働き方に不満を感じた」が31.1%、「同僚・部下との関わりに不満があった」と「仕事における成長・やりがいを感じられなくなった」がともに27.4%、「給与が低い・昇給が見込めなかった」が26.4%と続いた。

フリーコメントでは、「経営方針がころころ変わる」(38歳)、「上意下達の組織文化で、変化に対応できないと感じる」(39歳)、「直属の上司が尊敬できない人に変わった」(27歳)、「会社の業績不振と自身のキャリアアップが見込めなかった」(35歳)などといった声が寄せられたという。
大企業退職者の本音から上司・部下間の「コミュニケーション不足」が浮き彫りに。エンゲージメント低下や退職の要因とは?

“退職の決め手”でも「上司との関わりへの不満」が1位に

続いて、「退職の決め手となった要因」を尋ねると、「上司との関わりに不満があった」が最多の35.8%で、“愛着・エンゲージメント低下要因”の第1位と同様の結果だった。以下、「DX、テクノロジー活用等の遅れを感じた」が28.3%、「働き方に不満を感じた」が27.4%、「給与が低い・昇進が見込めなかった」が24.5%、「昇進・キャリアアップが望めなかった」が21.7%と続いた。

フリーコメントでは、「会社の発展に希望が持てなかった」(39歳)、「人事異動が多く、信頼できる人が周りからいなくなった」(35歳)、「休日出勤や時間外労働が多い」(27歳)、「キャリア転換が難しい」(36歳)などといった声があがったという。
大企業退職者の本音から上司・部下間の「コミュニケーション不足」が浮き彫りに。エンゲージメント低下や退職の要因とは?

3割以上が「退職事由を本音で伝えなかった」と回答

また、同社が「上司に退職事由を本音で伝えたか」を尋ねると、「かなり本気で伝えた」が32.1%、「やや本音で伝えた」が28.3%で、「本音で伝えた」との回答の合計は60.4%だった。対して、「あまり本音では伝えなかった」は21.7%、「全く本音では伝えなかった」は13.2%で、「本音を伝えなかった」人の合計は34.9%だった。
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退職事由を「なんとなく言いづらかった」とする人が半数近くに

さらに、退職事由を本音で伝えなかったとする人に「その理由」を尋ねた質問では、「なんとなく言いづらかったから」が43.2%で最も多くなった。以下、「円満退社したかった」が40.5%、「話し合う事自体が面倒だった(伝わらないと思った)から」が32.4%、「止められそうだと思った」が18.9%、「怒られそうだと思った」が16.2%、「退職理由が上司に関係したから」、「他の人に知られたくない理由だった」、「会社への批判になりそうだった」、「そもそも上司に話す機会がなかった/理由を聞かれなかった」がそれぞれ10.8%と続いた。
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人材定着に必要な上司・部下の関係性とは

また、同社が「前職にどんな上司や先輩、同僚がいたら退職しなかったと思うか」を自由回答で尋ねると、以下のような回答が得られたという。

・「信頼して関係がしっかり構築できた相手」(35歳)
・「課題を解決してくれる上司」(34歳)
・「理解してくれる上司や先輩」(39歳)
・「キャリアアップのロールモデルになる複数の先輩」(35歳)
・「部下の考え方を把握しながら働き方や業務改善に取り組んでくれる上司」(39歳)
大企業から退職した人の多くが、愛着・エンゲージメントの低下を招く要因を「上司との関わりへの不満」としていることがわかった。また、このことが退職事由に直結している傾向もうかがえる。働き甲斐を感じてもらいながら、職場に定着する人材を育成していくためには、上司・部下双方のコミュニケーションの活性化を図り、本音を言える関係性を構築していくことが重要と言えそうだ。