経営者・従業員間で「メンタルヘルス」に関する意識差広がる。従業員が相談しやすい職場環境の整備が課題か

株式会社リンケージは2022年9月13日、「経営者と従業員のメンタルヘルスに関する認識ギャップ」についての調査結果を発表した。調査は2022年7月に行われ、2020年度と比べて2021年度の売上が向上した企業の、「勤め先を成長企業である」と考えている会社員161名および経営者159名の計320名から回答を得た。調査から、経営者・従業員間でのストレスへの考え方の違いや、メンタルヘルスケアへの取り組みに際しての課題が明らかとなった。

6割超の経営者が従業員に「高いストレス耐性」を期待。従業員との意識差も

従業員のメンタルヘルスケアは、企業にとって取り組むべき大きな課題の一つとなっているが、経営者と従業員の間に「ストレスに対する考え方の違い」はあるのだろうか。リンケージはまず、「経営者は従業員に対して高いストレス耐性を期待しているか」を両者に尋ねた。すると、従業員側は「非常に求めている」が14.8%、「やや求めている」が32.7%で、両者の合計は47.5%だった。一方、経営者側は、「非常に求めている」が19.3%、「やや求めている」が45%で、合計64.3%となり、従業員側より16.8ポイント上回った。
経営者・従業員間で「メンタルヘルス」に関する意識差広がる。従業員が相談しやすい職場環境の整備が課題か

約9割の経営者が「自身に高いストレス耐性を期待する」と回答

次に、同社は「経営者は精神的支柱であるため高いストレス耐性を持つべきか」と両者に尋ねた。すると従業員側は、「非常にそう思う」が26.2%、「ややそう思う」が45.5%で合計71.7%だったのに対して、経営者側は「非常にそう思う」が42.4%、「ややそう思う」が45%で、合計が87.4%と、15.7ポイントの差があることがわかった。

また、「自身のストレス耐性への認識」を経営者に尋ねた質問では、「非常に高い」が26.4%、「やや高い」が47.7%で、合わせて74.1%という結果だった。「そうあるべきと考えている姿」と「実際の自己認識」との間には13.3ポイントのギャップあり、経営者が自身に過度の期待をしていることがうかがえる。
経営者・従業員間で「メンタルヘルス」に関する意識差広がる。従業員が相談しやすい職場環境の整備が課題か

「メンタルヘルスに関する相談を受けたい」とする経営者が8割超も、相談したい従業員は半数に

続いて同社は、経営者側に「メンバーからメンタルヘルスに関する相談をされたいか」を尋ねた。すると、「非常にそう思う」が37.1%、「ややそう思う」が47.7%で、合計は84.5%だった。一方、従業員側に「経営者に相談したいか」を尋ねると、「非常にそう思う」は15.4%、「ややそう思う」は34.6%となり、合計値は50%だった。経営者側が「相談を受けたい」とする割合と、従業員側が「相談したい」とする割合とでは、34.5ポイントもの差が開いた。
経営者・従業員間で「メンタルヘルス」に関する意識差広がる。従業員が相談しやすい職場環境の整備が課題か

「上司への信頼感の低さ」が“相談しやすさ”に影響している

さらに同社は、「上司に相談したいと思わない理由」を尋ねた。すると「解決しそうにない」が52.6%で最多だった。以下、「相手を信頼していない」が43.4%、「忙しそうで相談しづらい」が18.4%、「否定されそうで心配・こわい」が17.1%、「他に相談できる人がいて解決している」が10.5%、「人事評価に影響すると思う」が9.2%と続いた。
経営者・従業員間で「メンタルヘルス」に関する意識差広がる。従業員が相談しやすい職場環境の整備が課題か

期待する“ラインケア”は「自由な働き方」や「社内コミュニケーションの活性化」

最後に同社は「期待するメンタルヘルスケアに対する支援(ラインケア)」を尋ねると、「テレワークなど自由な働き方の推進」が44.2%で最も多くなった。以下、「社内コミュニケーションの活性化」が35.2%、「ストレスチェックの実施および集団分析など」が30.8%と続いた。
経営者・従業員間で「メンタルヘルス」に関する意識差広がる。従業員が相談しやすい職場環境の整備が課題か
本調査から、経営者と従業員の間にストレス耐性の認識で差が生じていることが明らかとなった。また、メンタルヘルスに関する相談は、上司への信頼感の低さなどにより従業員側が壁を感じてしまっている傾向もうかがえる。企業におけるメンタルヘルスケアをより効果的なものとするためには、従業員が経営者に相談しやすい風土づくりや、双方のコミュニケーション活性化を図る必要がありそうだ。