10月の「最低賃金改定」は過去最高の引き上げ幅に。人事の9割が認知するも、“賃金負担”を訴える担当者は6割

エン・ジャパン株式会社は2022年9月22日、10月の「最低賃金改定(アップ)」に向けて、人事担当者に各社の実態を探った調査結果を発表した。調査期間は2022年9月8日~13日で、同社が運営するサイトを利用する企業の人事担当者432名から回答を得た。調査から、2022年10月の「最低賃金改定」についての認識や、企業の賃上げの対応実態が明らかとなった。

過去最高額となる「最低賃金」について、6割が「よく知っている」と回答

世界的な物価高の影響を受け、企業の「賃上げ」への取り組みに関心が高まっている。今回の調査では、はじめにエン・ジャパンは「2022年10月より、最低賃金が過去最高額になることを知っているか」と尋ねた。すると、「よく知っている」が62%、「概要だけは知っている」が33%で、「知っている」の合計は95%となった。
10月の「最低賃金改定」は過去最高の引き上げ幅に。人事の9割が認知するも、“賃金負担”を訴える担当者は6割

5割以上が賃上げを実施予定。行わない企業は3割強

次に、「最低賃金改定を知っている」と回答した人に対し、「自社では、給与を変動させるか」を聞いた。すると、「最低賃金を下回るため、最低賃金まで引き上げる」が24%、「最低賃金を下回るため、最低賃金額を超えて引き上げる」が17%、「最低賃金は上回っているが引き上げる」が14%で、賃金を「引き上げる」との回答は計55%と過半数を占めた。一方、「最低賃金を上回っているため引き上げは行わない」とする回答は36%だった。

「最低賃金改定」に対するフリーコメントでは、「企業が負う負担の大きさに対して社会経済的な効果が薄い」(業種:その他/従業員数:100~299名)、「人件費増加は否めないが、人材確保の面からはプラスになる」(サービス関連/300~999名)、「パート従業員の人件費高騰に繋がる。現場によっては赤字を生む」(サービス関連/300~999名)などの声があった。
10月の「最低賃金改定」は過去最高の引き上げ幅に。人事の9割が認知するも、“賃金負担”を訴える担当者は6割

7割が「最低賃金改定」をきっかけに賃金引き上げを実行

続いて同社は、「賃金を引き上げる」と回答した企業に対して「その理由」を尋ねた。すると、「最低賃金がアップするため」が73%で最も多くなった。以下、「人材確保・採用」が48%、「社員のモチベーション向上」が45%、「世間相場(同業他社・同一地域内他社)への対応」が33%、「物価上昇への対応」が20%で続いた。
10月の「最低賃金改定」は過去最高の引き上げ幅に。人事の9割が認知するも、“賃金負担”を訴える担当者は6割

6割が「最低賃金改定」に“負担感”を持つ理由とは

同社が「最低賃金引き上げがもたらす自社への影響度」について尋ねたところ、「大いに負担」と「多少は負担」の合計は64%だったという。

さらに「負担になっている理由」についても聞くと、最多は「アルバイト・パート社員が多い」が47%だった。以下、「扶養限度がある社員の勤務時間減少」(38%)、「同業他社など各社が賃金を引き上げ、採用難度が上昇」(37%)、「賃上げ対象でない社員のモチベーション低下」(26%)、「人事・労務への業務負担増加」(22%)と続いた。
10月の「最低賃金改定」は過去最高の引き上げ幅に。人事の9割が認知するも、“賃金負担”を訴える担当者は6割

約4割が“今後も最低賃金を引き上げるべき”との考え

最後に、「今後の最低賃金改定に対する考え」を尋ねると、「引き上げるべき」が最も多く37%だった。以下、「職種別の最低賃金設定など柔軟な制度を導入すべき」が34%、「現状の金額を維持すべき」が15%、「わからない」が8%「その他」が5%、「引き下げるべき」が2%と続いた。
10月の「最低賃金改定」は過去最高の引き上げ幅に。人事の9割が認知するも、“賃金負担”を訴える担当者は6割
本調査では、2022年10月の「最低賃金改定(アップ)」の認知度は9割を超え、実際に賃上げを行う企業が多いことがわかった。一方で、賃上げを実施しない企業も3割となり、状況によっては賃上げが困難である実態もうかがえた。厚生労働省の呼びかけに対し、企業が揃って賃上げを目指すには、まだ課題が多いようだ。