働く場所を自由に選択できる「どこでもオフィス」で“中途採用応募者数”が増加。ヤフーがリモートワーク施策の効果を公開

ヤフー株式会社は2022年8月30日、同年4月1日に導入した新制度「どこでもオフィス」の利用状況を発表した。「どこでもオフィス」は、社員一人ひとりのニーズに合わせて働く場所や環境を選択できる、同社独自の制度だ。今回の発表によると、同制度導入後、中途採用応募者数が導入前の1.6倍に増加するなどの効果が得られているという。リモートワークによるコミュニケーション不足などが課題となる企業もある中、同社が取り組むウェルビーイング向上に向けた施策ではどのような効果が得られているのだろうか。

国内のどこでも居住可能な制度利用で、移住した従業員は400名超に

新制度を開始した2022年4月1日以降、ヤフーでは130名以上の社員が飛行機や新幹線での通勤圏へ転居し、東京オフィスに所属する社員のうち約400名が、1都3県以外の地域へ転居している。飛行機や新幹線での通勤圏に転居した社員が選択した居住地として多かったのは、「九州地方」(48%)、「北海道」(31%)、「沖縄県」(10%)など。同社によると、社員それぞれがウェルビーイングを向上させ、パフォーマンスを最大化できる場所や環境を選択しているという。

さらに、新制度発表・導入前の2021年との比較で、同社への中途採用応募者は1.6倍に増加。中でも、一都三県以外の地域からの応募者が、4月は28%増、5月は31%増、6月は35%増と、月ごとに増加しているようだ。そうした効果を生んだ「どこでもオフィス」の制度概要は下記の通り。

「どこでもオフィス」概要
1.居住地の選択肢を拡大し、日本国内であればどこでも居住可能に
従来の、居住地に関する「出社指示があった際に、午前11時までに出社できる範囲」との限定を撤廃。

2.通勤手段制限の撤廃
従来、電車・新幹線・バスのみを通勤手段として認めていたが、特急や飛行機、高速バスでの出社を可能に。

3.交通費の片道上限の撤廃
従来、「片道6,500円/日、15万円/月」としていた交通費の上限のうち、片道上限額の「6,500円/日」を撤廃。

4.「どこでもオフィス手当」の増額
働く場所を整備するために支給していた「どこでもオフィス手当」を1,000円増額し、毎月最大10,000円の補助(どこでもオフィス手当5,000円+通信費補助5,000円)を支給。

5.希望者へのタブレット端末貸与
希望する社員に対し、業務用PCとは別に新たにタブレット端末を貸与。社員のさらなる生産性向上を目的とし、それぞれの業務スタイルやニーズに合わせて最適なデバイス選択が可能に。

※本制度の対象者は、全国の正社員、契約社員、嘱託社員の約8,000名としている

社員間の「コミュニケーション活性化」を目的に、懇親会費などを補助

また同社は、多くの企業で「リモートワークにおける社員同士のコミュニケーション不足」が課題となっている中、課題への解決策として、社員間の懇親会飲食費用を補助する「懇親会費補助」を月に5,000円支給する施策を取り入れた。同社によると、半数以上の社員がこの制度を利用しているという。

さらに、働く場所の選択肢の一つであるオフィスをニューノーマルな時代の働き方に最適化する「実験オフィス」や、上司と部下が週に1回程度面談をする「1on1ミーティング」、リモートワーク環境下でも社員食堂の味を楽しめる「オンライン懇親会セット」など、課題解決に向けたさまざまな施策を行っているとしている。

上記をはじめとして、同社が実施しているコミュニケーション不足に対する解決策の概要は以下の通り。

1.懇親会費補助
オンライン・オフラインにかかわらず、社員間で行われる懇親会費用を1人あたり月5,000円まで補助。(2022年8月時点では、新型コロナウイルス感染症の拡大状況を踏まえオンライン限定としている)

2.「実験オフィス」
「会社か自宅か」の二択ではなく、社員が自身のパフォーマンスを発揮できる場所を選択できる「どこでもオフィス」制度の導入にともない、オフィスへの出社を望む社員にも働きやすい環境を提供するもの。「1人で集中」、「みんなで会議やコミュニケーション」など、目的ごとにオフィスの使いやすさを追及する取り組みを実施。(2022年8月時点では利用を一時制限している)

3.「ともカフェ」
同社オフィス内のレストラン「BASE」で、ランチやドリンク(2人以上のグループが対象)などの無料提供を実施。(2022年8月時点では、利用を一時制限している。)

4.「オンライン懇親会セット」
オンラインでの懇親会において、画面越しでも同じ食事を楽しめるよう、食事とドリンクのセット商品を考案し、「オンライン懇親会セット」として社員に販売。

5.「おともだち獲得大作戦」
新卒社員が運営するオンラインランチ会。2020年以降に入社した新入社員の中には、入社以来ほとんど出社機会がなく、オフィスでの雑談の経験が乏しい社員がいることから、新入社員が自らオンラインランチを実施。オンラインランチのテーマは、「難解プログラミング言語を語りたい!」などの業務にかかわるものや、「筋トレについて語る会」など趣味に関するものまでさまざまで、これまでに約100ものテーマに分かれ実施され、500名以上が参加している。


経済産業省は、「テレワークの実施は新型コロナの感染拡大の緊急時において、事業継続に強い力を発揮した」としている。さらに、今後は人材・企業などの経済・社会資源の再配置を活性化し、首都圏と地方双方の社会・経済解決を図りたいとしている。本取り組みは、多様な働き方で事業活動を促進する先進事例となりそうだ。