厚生労働省が拡充した「業務改善助成金制度」を9月より適用。原材料費高騰により利益減少した中小・小規模事業者も対象に

厚生労働省は2022年8月30日、「業務改善助成金制度」の拡充を発表した。拡充された制度は、同年9月1日から適用が開始されている。本制度は、事業場内で最も低い賃金(以下、事業場内最低賃金)の引き上げを図る中小企業および小規模事業者の生産性向上に向けた支援を目的とした制度だ。同省は本制度拡充により、昨今の原材料費高騰などを受け利益率が落ち込んだ事業者への設備投資等に対する助成範囲の拡大や、事業場内最低賃金が低い事業者に対する、助成率の引き上げなどの支援拡充を図りたいとしている。

「原材料費高騰による利益減少」を支援対象に含め、対象経費の拡充および賃上げ対象期間延長を実施

厚労省は、続く原材料費の高騰などにより利益率が低下している中小企業および小規模事業者を支援するため、これらの企業が行う生産性向上に向けた取り組みを補助する「業務改善助成金制度」の拡充を2022年9月より適用している。同制度は、事業内最低賃金の引き上げを目的として助成を行う「通常コース」と、新型コロナウイルス感染症の影響で売上が30%以上減少した中小企業等を支援する「特例コース」とに分かれているが、今回の制度拡充では、どちらのコースとも対象に「原材料高騰により利益が減少した事業者」を含めた。拡充した制度のポイントは下記の通りだ。

【通常コース 拡充のポイント】
<特例の対象事業者および対象経費の拡充>
1.「原材料費の高騰など社会的・経済的環境の変化等外的要因により利益率が前年同月に比べ3%以上低下した事業者」が、特例の対象事業者に追加された。

2.特例の対象事業者となる「新型コロナウイルス感染症の影響により売上高等が減少している事業者」の売上減少幅要件を、「30%」から「15%」に緩和。併せて、売上高の比較対象期間が「2年前まで」から「3年前まで」に変更された。

3.1または2のいずれかを満たす事業者は、賃金引き上げ労働者数10人以上の助成上限額区分が利用可能となった。

4.特例で助成対象経費となる自動車の要件が、「定員11人以上」から「定員7人以上又は車両本体価格200万円以下」に緩和された。

<助成率の引き上げ>
(a)事業場内最低賃金が870円未満の事業場:9/10
(b)事業場内最低賃金が870円以上920円未満の事業場:4/5(9/10)
(c)事業場内最低賃金が920円以上の事業場:3/4(4/5)
※()内は、生産性要件を満たした事業者に対して適用される


【特例コース 拡充のポイント】
<申請期限・賃上げ対象期間の延長>
申請期限・賃上げ対象期間が「2022年7月29日まで」から、「2023年1月31日まで」に延長された。

<対象となる事業者の拡大>
対象となる事業者の拡大・助成対象経費が以下のように拡大された。

(a)「原材料費の高騰など社会的・経済的環境変化等外的要因により利益率が前年同月に比べ5%以上低下した事業者」
(b)「新型コロナウイルス感染症の影響により売上高等が30%以上減少した事業者」の売上高等の比較対象期間が延長され、2021年4月から「2022年12月まで」に見直し。併せて、売上高の比較対象期間が2年前までから3年前までに変更された。

<助成対象経費の拡大>
助成対象経費となる自動車の要件が、「定員11人以上」から「定員7人以上又は車両本体価格200万円以下」に緩和された。

<助成率の引き上げ>
助成率が「一律3/4」から、事業場内最低賃金額が920円未満の事業者は「4/5」に引き上げられた。


今回の制度拡充により、これまで支援対象に含まれなかった事業者も、支援を受けられる可能性がある。原材料費高騰への対策を検討中の事業者は、本制度の活用も視野に入れてみてはいかがだろうか。