「組織の方向性」の明確化が“エンゲージメント向上”につながるのか。従業員が経営者に求めるメッセージ発信とは

株式会社レンズアソシエイツは2022年8月1日、経営者からのトップメッセージ発信の実態や、社員側の受け止め方などを探った「経営者の『裸の王様』に関する実態調査」の結果を発表した。調査は2022年7月15日に行われ、全社的にテレワークを実施中の従業員数100名以上の企業に勤務する一般社員104名から回答を得た。調査では、社員のやる気やエンゲージメント向上に必要なトップメッセージの要素などが明らかとなった。

2割超の社員が「組織の方向性が明確に発信されていない」と感じている

企業において社員のエンゲージメントを向上させるには、自社の現状や今後の展望などを積極的に発信し、現場に落とし込むことが重要だろう。レンズアソシエイツはまず、「勤務先の経営者から『組織の方向性』に関して明確なメッセージが発信されているか」を尋ねている。すると、「非常にそう思う」が28%、「ややそう思う」が44.2%で、合計が72.2%となった。一方で、「あまりそう思わない」は20.2%、「全くそう思わない」は3.8%で、合わせると24%だった。

また、「あまりそう思わない」、「全くそう思わない」と回答した人に自由回答で「理由」を尋ねたところ、「会社全体の大きな話ばかりで、身近に感じられない」や、「他社のビジョンをコピペしたようなメッセージだから」、「従業員まで伝わってこない」などといった声が寄せられたという。
「組織の方向性」の明確化が“エンゲージメント向上”につながるのか。従業員が経営者に求めるメッセージ発信とは

約8割が「組織の方向性に納得している」と回答

次に、「組織の方向性が、明確に発信されている」と回答した人に対し、「経営者から発信されるメッセージに納得しているか」を尋ねている。すると、「非常に納得している」が24.1%、「やや納得している」が53.3%で、合計は77.4%だった。一方で、「あまり納得していない」は8%、「全く納得していない」は4%で、合計は12%にとどまった。
「組織の方向性」の明確化が“エンゲージメント向上”につながるのか。従業員が経営者に求めるメッセージ発信とは

トップのメッセージに「納得していない理由」の1位は「現場への理解がない」こと

同社は、「経営者から発信されるメッセージに納得していない」と回答した人に、「その理由」も尋ねている。すると、「現場のことを理解していない」が88.9%で最多だった。以下、「自分が考える方向性と合致しない」が33.3%、「コロナウイルスなど、社会の不安定さを考慮しきれていない」が22.2%、「方向性が間違っているように感じる」と「時代の流れに合っていない」がともに11.1%となった。
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約8割がトップメッセージに対し「理解したフリをしている」実態が明らかに

また、トップから発信されるメッセージに「あまり納得していない」、「全く納得していないと回答した人に、「トップメッセージが腑に落ちていないのに、理解したフリをしているか」を尋ねている。すると、「かなりある」が44.5%、「ややある」が33.3%で、合計が77.8%だった。一方で、「あまりない」、「全くない」はともに11.1%で、合わせると22.2%にとどまった。独りよがりなメッセージ発信では、経営者が「裸の王様」になってしまう可能性もあるようだ。
「組織の方向性」の明確化が“エンゲージメント向上”につながるのか。従業員が経営者に求めるメッセージ発信とは

不安定な社会情勢の中、「組織の方向性の明確化」を重視する声が約8割に

次に、「社会情勢が不安定な今、立ち返る場所として『組織の方向性』の明確化が重要だと思うか」を尋ねた質問は、「非常にそう思う」が32.7%、「ややそう思う」が49%で、合計は81.7%だった。一方で、「あまりそう思わない」は7.7%、「全くそう思わない」は1%で、合わせると8.7%にとどまった。
「組織の方向性」の明確化が“エンゲージメント向上”につながるのか。従業員が経営者に求めるメッセージ発信とは

「組織の方向性の明確化」が社員のパフォーマンス・エンゲージメント向上に効果か

最後に同社は、「組織の方向性の明確化が重要」だと回答した人に「その理由」を尋ねている。すると、「経営側と従業員側で同じベクトルで進めるから」が54.1%で最も多くなった。以下、「自分の仕事の方向性を認識でき、パフォーマンスが上昇すると思う」が38.8%、「エンゲージメントが上昇すると思う」が36.5%、「意思決定時の基準になると思う」が34.1%、「一枚岩となった方が不安定な状況を乗り越えられると思う」が30.6%、「新たなアイデアや意見が生まれやすくなると思う」が12.9%となった。
「組織の方向性」の明確化が“エンゲージメント向上”につながるのか。従業員が経営者に求めるメッセージ発信とは
本調査からは、経営者が「組織の方向性」を明確に示すことや、その内容が現場での業務や社会情勢を反映したものになっていることが、社員のやる気やエンゲージメント向上につながり得ることが明らかとなった。経営者が独りよがりな「裸の王様」にならないためには、現場と目線を合わせながら自社の方向性を明確に示し、道しるべとしていくことが必要と言えそうだ。