企業の中長期的な成長を見据え、経産省が「CGSガイドライン」を改定。コーポレートガバナンスの取組促進に向け活用を呼びかけ

経済産業省は2022年7月19日、改定版「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指標」(以下、CGSガイドライン)を公表した。今回の改定は、2021年11月に行われたCGS研究会(第3期)における議論を踏まえたものだという。経産省は、日本企業におけるコーポレートガバナンスの取り組みの深化を促すべく、企業に対し同ガイドラインの活用を呼びかけている。

「攻めのガバナンス」を推進すべく3項目を改めて整理。人材育成における課題解決策なども提示

経済産業省は2017年3月、日本企業のコーポレートガバナンスへの取り組みを促進することを目的としてCGSガイドラインを策定し、2018年9月に初めての改定を行っている。

同省は、「企業の競争力強化には、長期的な価値創造ストーリーを描いた上で、イノベーションや成長に向けた投資を促進させることが不可欠」だとしている。そのために、経営者の企業家精神やアニマルスピリットが健全な形で発揮されることや、より良い経営戦略の立案でスピード感を持ってリスクテイクができる環境を実現すること、さらには、上場企業の経営が企業価値の向上を強く意識したものであることなどに重要性を感じているという。

こうしたことから、2021年11月にGCS研究会(第3期)を設置し、問題に対する検討を進めてきた。そして今般、同研究会の議論をまとめる形でGCSガイドラインの改定を行ったという。改定の方向性や主なポイントは以下のとおりだ。

【ガイドライン改定の方向性】


●企業のコーポレートガバナンス改革が企業の持続的成長および中長期的な企業価値向上に寄与する経路を改めて整理

●ガバナンスを監督する側だけでなく、執行側・監督側の双方の機能強化を相乗的に
推進する意識の必要性を提言

●企業がコーポレートガバナンスの取り組みを推進していく際には、各原則の趣旨および精神を理解した上で、自社が目指す姿などを踏まえ自律的に工夫を行うことに加え、株主等のステークホルダーに対する自社の選択理由を積極的に説明することを強く期待する旨を記載


【ガイドライン改正のポイント】


1.取締役会の役割・機能の向上

●社外取締役増加の傾向を踏まえ、「監督」の意義や、ガバナンス体制およびそれに応じた機関設計の選択についての考え方を改めて整理

●企業の抱える課題を踏まえた取締役選任の考え方の提示

●「資本市場を意識した経営」に関する知識等を備えた者を、社外取締役として選任することが選択肢のひとつであることを提示

●「投資家株主の関係者」を取締役として選任する場合における留意点を、別紙3にて記載


2.社外取締役の資質・評価のあり方

●コーポレートガバナンス改革の実質化に向け、社外取締役の資質を高めるための研修機会の提供・斡旋・費用の支援を行うべきである旨を記載

●指名委員会・報酬委員会の構成の過半数を社外取締役とし、その委員長を社外取締役とすることを検討すべきであるとし、社外取締役の評価、ボードサクセッションなどといった項目についての考え方を整理


3.経営陣のリーダーシップ強化のための環境整備

●トップマネジメントチームの組成と権限の委譲、経営戦略の策定および実行における工夫、経営・執行の機能強化のための委員会の活用、経営陣の報酬、幹部候補人材育成・エンゲージメント向上などの内容について、ベストプラクティスを整理


経産省が「株価指数に表される日本企業の『企業価値』は、欧米や新興国と比較して『一人負け』の状況にある」としていることからも、日本の企業力強化は喫緊の課題と言えるだろう。中長期的な企業価値向上に向け、本ガイドラインを参考にコーポレートガバナンスの見直しを検討してみてはいかがだろうか。