「ニューロダイバーシティ人材」育成に向けた新スキームをEY Japanが開始。障がい者雇用環境の課題解決へ

EY Japanは2022年6月22日、精神・発達障がい診断のある「ニューロダイバーシティ人材」の雇用、就労状況改善を目指す組織である「Diverse Abilities Center(ダイバース・アビリティズ・センター)」(以下、DAC)を、同年6月1日付で株式会社Kaienと共同で発足したと発表した。DACは、障がいのためにこれまで就労機会が限られてきた人材が専門的なスキルや業務経験を積み、キャリアの選択肢を広げる支援をすることを目的とした機関で、EY Japanの全社的な取り組みとして、同社のマーケッツ部門内に新チームを組成し、体制を構築している。

1期生としてニューロダイバーシティ人材22名を採用し、就業・キャリア構築機会を提供

EY Japanは、D&I推進において、2021年より「Equity(公正)な社会の実現」にも注力しているという。その中で、障がいを「Disability(能力が損なわれている)」ではなく「Diverse Abilities(多様な能力がある)」と捉え、能力の発揮には適切な環境整備が必要だとしている。一方で同社は、日本の障がい者の就労環境について、「専門職としてキャリアを築く機会が少なく、スキルアップやキャリアアップに通じる業務に関わる機会も限定的だ」という課題を感じてきたという。

そこで同社は、ニューロダイバーシティ人材(※)の就労支援における専門人材を保有するKaien社と共同でDACを発足。整った環境のもとで、ニューロダイバーシティ人材が自身の持つスキルを発揮し、キャリアを切り開くことを後押しするとして、1期生22名を採用した。

(※)ニューロダイバーシティ:Neuro(脳・神経)とDiversity(多様性)という2つの言葉をかけ合わせて生まれた、「個人レベルでの様々な特性の違いを“多様性”と捉えて相互に尊重し、それらの違いを社会の中で活かす」という考え方を言う。

DACでのニューロダイバーシティ人材育成スキームは下記のとおりだ。

●1期生の募集・採用では、通常の採用プロセスと同等か、それ以上のステップを踏み、候補者の持つスキルの精査を実施。能力があるにもかかわらず、障がいを理由に就業機会が限られている人が、平等にキャリアのスタート地点に立てる機会を提供する

●DAC内では、他のEY Japanの社員と同等にクライアント対応も含む業務に従事し、幅広いキャリア構築の機会を提供する

●「適切な環境さえ整えれば能力が発揮できる」という考えのもと、外部の支援団体の常駐や研修を充実させる。EY Japan全体でニューロダイバーシティ人材の育成に積極的に取り組む


今回、採用された1期生は、一般事務からリサーチ、翻訳、資料作成、Webデザイン、動画作成などの業務を担当する。なお、DACではKaien社の指導員と支援員が常駐し、業務管理や業務指導、相談、健康管理を実施。また、同社の他の社員と同じく、フレックスタイム勤務、在宅勤務制度が利用可能であるほか、リモート雇用や短時間勤務も選択可能だという。これにより、障がい者の就労時の課題となりがちな通勤や転居、勤務時間などでの負担軽減を図り、複数の地方在住者の採用も実現している。

経済産業省によると、ニューロダイバーシティ人材が持つ特性は、デジタル分野とも親和性が高いとされ、デジタル化が進む社会における企業の成長戦略としても注目が高まっているという。特性を活かして企業の成長を支える人材活用の導入例として、今後も本取り組みに注目していきたい。