人材育成の目的を「業務指導」と捉えている育成担当者は半数以上。“仕事観”や“組織観”は若手社員と同等に

リ・カレント株式会社(以下、リ・カレント)は、2022年3月28日、若手の育成を担う社員の本音を探るべく実施した「人材育成に関する意識調査」の結果を発表した。調査時期は2021年10月で、東京都で社内の育成に関わる20代~60代1,022名から回答を得ている。同調査結果から、人材育成を担当する社員の人材育成に対する意識や仕事観などが明らかになった。

人材育成で重視することは「業務指導」が半数以上に

企業内で人材育成に関わる社員の意識はどのようなものだろうか。まず、リ・カレントは「人材育成において一番重視するもの」について尋ねている。すると、「業務に関する知識・技術・技能を伝えること」が54.6%で最多となり、次いで「部下自身の目指す姿に沿ってキャリアアップを支援すること」が18.8%となった。また、“ポスト人材育成”の観点である「将来の会社・組織のために必要な人材を育成する」との回答は15.7%と、2割を下回った。
人材育成の目的を「業務指導」と捉えている育成担当者は半数以上。“仕事観”や“組織観”は若手社員と同等に

約半数が「育成へのサポート・支援制度に不満がある」と回答

同社が、「育成に関するサポート・支援制度に満足しているか」を尋ねた質問では、「やや不満がある」、「不満がある」の合計が48.2%となり、約半数の人が職場でのサポートや支援制度に満足していないことが明らかになった。

さらに、「やや不満がある」、「不満がある」と回答した人に対し、「具体的な不足部分」も尋ねている。すると、「育成担当者向けの研修不足」が37.3%と最も多く、以下、「新人向けの研修不足」(36.7%)、「主業務との業務量調整が不十分」(36%)、「現場での実習制度不足」(31.7%)なども僅差で続いた。
人材育成の目的を「業務指導」と捉えている育成担当者は半数以上。“仕事観”や“組織観”は若手社員と同等に

「育成責任は会社・組織にある」と考える人が多い傾向か

続いて、「部下・後輩の成長についての責任は誰が持つべきか」について、1~3位までランク付けするように尋ねた質問を見てみると、「1位」の回答で最も多かったのは、「会社・組織」で40.6%だった。「2位」で最多だったのは「直属の上司」で37.1%、「3位」で最も多いのは「業務指導を担当する社員」の27.8%だった。

人材育成について、育成担当者の責任として受け止めつつも、「最終的な責任は会社・組織にある」という考えを持つ人が多いことがうかがえる。
人材育成の目的を「業務指導」と捉えている育成担当者は半数以上。“仕事観”や“組織観”は若手社員と同等に

働く目的は「報酬を得るため」が最多。若手社員と“仕事観”で差が見られない結果に

同社は、「自身の仕事観(働く目的・譲れないもの・価値観)を持っているか」についても尋ねている。すると、「他者に語れるほど明確に持っている」が19.2%、「語れるほどではないが持っている」が52.2%となり、7割以上の人が何らかの仕事観を持っていることがわかった。

仕事観を持っている人に対し、「具体的な仕事観」を尋ねた質問では、「報酬を得るため」が58.9%と最も多かった。以下、「自分が成長するため」が46.1%、「社会に貢献するため」が39%などと続いた。

また、同社は「具体的な仕事観」についての回答結果を、2021年に若手社員を対象に実施した「若手意識調査」の結果と比較している。その結果、若手社員においても、「働く目的」として「報酬を得るため」との回答が最も多かったことから、同社は「仕事観について、立場ごとにはっきりとした差は認められない結果となった」としている。
人材育成の目的を「業務指導」と捉えている育成担当者は半数以上。“仕事観”や“組織観”は若手社員と同等に

所属組織に対して「報酬をもらう場所」と捉えている人が最多で3割以上に

さらに、「所属組織についてどのような考えを持つか(組織観)」を尋ねた質問では、「業務の対価として報酬をもらう場所である」が35%で最も多く、以下、「共通の目的を目指すチームである」が22.6%、「自分が属する“居場所”である」が16.9%などと続いた。

これと比較して、2021年の「若手意識調査」の同質問に対する回答では、「業務の対価として報酬をもらう場所」が26.3%と最も多く、以下、「自分が所属する“居場所”」が16.8%、「共有の目的を目指すチーム」が15.7%などと続いたという。組織観においても、育成における立場間で差がみられないことがわかった。
人材育成の目的を「業務指導」と捉えている育成担当者は半数以上。“仕事観”や“組織観”は若手社員と同等に
調査結果から、企業の育成担当者においては、育成の目的を「業務指導」と捉えている人が多いことがわかった。また、「何のために働くか」、「組織をどう捉えているか」などといった、仕事観・組織観については、育成担当者と若手社員の間で差が見られないことも浮かび上がった。組織のために必要な人材となる「ポスト人材」の育成を目指すためには、育成担当者の意識変革を促すアプローチが必要なのかもしれない。