求められる“管理職像”はこの10年で大きく変化。「マネジメント力」や「コーチング力」をより重視する傾向に

株式会社ラーニングエージェンシー(以下、ラーニングエージェンシー)は2022年2月22日、同社が行った「組織・チームのあり方の変化に関する意識調査」の中から、「求められる管理職像の変化」に関する結果を発表した。調査期間は2021年10月11日~12月13日で、ビジネスパーソン5,099名から回答を得た。これにより、10年前と比べて「管理職に求められる役割像」がどのように変化しているのかなどが明らかとなった。

現在の管理職に求められるのは「コンプライアンス」と「モラル」か

管理職自身や一般社員が「業務を通じて実感する管理職像」は、この10年でどのように変化しているのだろうか。

まず、ラーニングエージェンシーは「自身が勤務してきた、または勤務している会社の管理職について、10年前と比べて求められる管理職像は変化したと思うか」を質問している。その結果、「変わった」は52.9%となった。

役職別にみると、管理職による「変わった」との回答は79.8%と8割に迫る結果となり、一般社員の「47.2%」を大きく上回った。
求められる“管理職像”はこの10年で大きく変化。「マネジメント力」や「コーチング力」をより重視する傾向に

最重視は「コンプライアンス」や「モラル」か

続いて同社は、求められる管理職像が「10年前から変わった」とした回答者を対象に、「求められる管理職像」について19項目の質問を行い、それぞれ10年前と今とで比較している。

その結果、現在求められている管理職像として最も回答が集まったのは「コンプライアンスやモラルを重視する」で82.7%となり、10年前から73.1ポイント増加した。以下、「時間内で効率的に終わらせる」が75.9%(62.7ポイント増)、「自ら何をすべきかを定義し、遂行する」が70%(53.5ポイント増)、「個人としてのスキルアップを志向する」が68.4%(55ポイント増)、「対話を重んじる」が67.7%(53.5ポイント増)などと続いた。

「コンプライアンスやモラルを重視する」がトップであったことに対して、同社は「コンプライアンス違反に関連する企業不祥事の報道や、パワハラ防止法、働き方改革、プレイングマネージャーが当たり前となったことなどが反映された結果」だと推察している。

一方、10年前と比べて最も減少した項目は、「トップダウンで物事を進める」の15.4%で、61.8ポイントの減少となった。次いで、「部下に自分の模倣を求める」の7.2%で、55.2ポイントの減少だった。
求められる“管理職像”はこの10年で大きく変化。「マネジメント力」や「コーチング力」をより重視する傾向に

管理職像は「現状」と「求められるもの」で大きく乖離

「管理職が実際に担っている役割」に関して質問すると、「コンプライアンスやモラルを重視する」が50.2%と最も多く、以下、「トップダウンで物事を進める」が44.5%、「企業利益を重視する」が43.4%、「リスクヘッジを徹底する」が42.1%、「前例を踏襲する」が41.3%などと続いた。前の質問にあった「10年前に求められていた管理職像」と、合致点が多い結果となっている。

さらに、同社は「現在求められている管理職像」と「管理職が実際担っている役割」の数値を比較し、そのズレに目を向けている。すると、スコアに大きな差があった項目は「自ら何をすべきかを定義し、遂行する」の40.9ポイント差、「ボトムアップで物事を進める」の40.2ポイント差、「時間内で効率的に終わらせる」の38.8ポイント差、「前例にないことを行う」の38.7ポイント差、「対話を重んじる」の35.3ポイント差、「部下に自分とは異なる強みの発揮を求める」の34.3ポイント差などとなった。

こちらも同じく前の質問と照合してみると、現在の実際の管理職像は、「10年前求められていたもの」から「現在求められているもの」へ変化している途中であることがうかがえる。
求められる“管理職像”はこの10年で大きく変化。「マネジメント力」や「コーチング力」をより重視する傾向に

求められる管理職像が変化した理由は「働き方の多様化」や「市場の変化」など

同社は、「管理職像が変化した理由」についても尋ねている。その結果、「働き方が多様化した」が68.4%で最多となり、次いで「市場環境が変化・複雑化した」が52.2%と続いた。リモートワークなどが加速したほか、これまで通りのやり方ではうまくいかないケースが多数発生したことが原因となり、管理職像に大きな影響を与えたと同社は推測している。

また、「従業員満足度や従業員の働きがいを重視する世の中になった」も42%と、上位になった。このことから、「管理職のふるまいが従業員満足度や働きがいへ影響を与える」と、管理職・一般社員ともに感じているといえるだろう。
求められる“管理職像”はこの10年で大きく変化。「マネジメント力」や「コーチング力」をより重視する傾向に

管理職自身が重視するのは「マネジメント力」と「コーチング力」

「管理職に求められるスキルや知識の中で、特に重視されるようになってきたもの」を尋ねた質問では、「マネジメント」が60.4%で最多となった。以下、「IT・デジタルに関するリテラシー」が45.1%、「言語化する力(相手に合わせた表現で伝える力)」が40.9%などと続いた。

また、管理職の回答で多かった「マネジメント」(68.4%)と「コーチング」(50.1%)の2項目は、一般社員の回答を大きく上回った。同社は、「“人を動機づけ、動かし、成果を出すこと”が求められる一方で、それが十分にはできていないという管理職自身の課題感が反映されているのではないか」と推察している。
求められる“管理職像”はこの10年で大きく変化。「マネジメント力」や「コーチング力」をより重視する傾向に
10年間で管理職に求められるものが変化した背景には、VUCAの時代の「変化の速さ」、「働き方の多様化」とそれによる「働く人の価値観の変化」などが根底にあると考えられる。企業で管理職としてマネジメントに携わる人は、自身に求められているものと現状について、調査結果も参考にしながら見直してみてはいかがだろうか。