大企業の8割超が「自社のデジタルスキルに課題がある」と回答。「IT人材採用」に関し経営層と現場で認識差も

株式会社Progate(以下、Progate)は2022年2月16日、MMDLabo株式会社が運営するMMD研究所と共同で実施した「企業のDXおよびデジタル課題に関する実態調査」の結果を発表した。調査期間は2022年1月21日~24日で、20歳~60歳の正社員の男女10,000人から回答を得た。この調査を通し、世代間でのデジタルスキル習得度の格差など、企業のDX推進における課題が明らかとなった。

大企業の半数が「デジタル化を積極的に進めている」と回答

新たな働き方を模索し、DXやIT化を推進したい企業は少なくないと考えられるが、推進にはどのような課題があるのだろうか。

まずProgateが「勤め先のデジタル化の状況」について尋ねたところ、「デジタル化を積極的に進めている」が26.6%、「進めることを検討している」が18.8%、「推進したいが、実行に移せていない」が17.8%となり、合計63.1%が自社のデジタル化の推進を考えていることがわかった。

回答を企業規模別にみると、「積極的に進めている」は大企業で50.6%と半数超だったのに対し、中小企業では16.7%にとどまり、約3倍の差がついた。企業規模によって、デジタル化の推進状況に違いがあることがうかがえる。
大企業の8割超が「自社のデジタルスキルに課題がある」と回答。「IT人材採用」に関し経営層と現場で認識差も

デジタル化推進を阻む要因は「デジタルスキル格差」と「IT人材不足」が最多

続いて同社は、自社のデジタル化の推進を考えている人を対象に、「デジタル化推進への課題」を尋ねている。全体では「社内のデジタルスキルに格差がある」と「デジタル化を進めるためのIT人材の不足」がともに29.3%で最多となった。

回答を企業規模別にみると、大企業では「IT人材不足」(34.7%)が、中小企業では「デジタル化のための費用がかかる」(33%)が、それぞれ最も多くの回答を集めた。
大企業の8割超が「自社のデジタルスキルに課題がある」と回答。「IT人材採用」に関し経営層と現場で認識差も

現場と経営層で「IT人材採用への課題感」にギャップ

また同社は、予備調査によって抽出した「社員・部下教育、福利厚生を担当している社員」および「会社経営者・役員」計500人に対し、「IT人材採用において課題はあるか」と尋ねた。すると、「課題がある」との回答が、「大企業の教育担当社員」で79.5%、「中小企業の教育担当社員」で69.5%と、大企業で特に多くなった。

一方で、「会社経営者・役員」では「課題がある」が36%にとどまったことから、経営層と現場の間にデジタル化推進への意識の違いがあることが見て取れる。
大企業の8割超が「自社のデジタルスキルに課題がある」と回答。「IT人材採用」に関し経営層と現場で認識差も

大企業の教育担当社員の8割超が、自社従業員のデジタルスキルに「課題あり」と回答

同様に、教育担当社員および会社経営者・役員(計500人)に対し「自社従業員のデジタルスキルに課題はあるか」と尋ねたところ、「課題がある」との回答は、「大企業の教育担当社員」で84.5%、「中小企業の教育担当社員」で77.5%に上った。

一方、「会社経営者・役員」では「課題がある」の回答は48%となり、こちらも経営層に比べ、現場社員の課題感が強く表れる結果となった。
大企業の8割超が「自社のデジタルスキルに課題がある」と回答。「IT人材採用」に関し経営層と現場で認識差も

デジタルスキル獲得の課題は「学習時間の確保」や「ベテラン層の意識向上」か

次に、「自社従業員のデジタルスキルに課題がある」と回答した教育担当社員または会社経営者・役員に対し、課題内容を尋ねている。すると、全体で最も多い回答は「デジタルスキルを学ぶ時間を確保できない」(32%)となり、以下「若手社員とミドル・ベテラン社員間のデジタルスキルの格差が大きい」(29.8%)、「ミドル・ベテラン社員の習得意識が低い」(26.1%)などと続いた。世代によるデジタル推進への意識の違いを感じる教育担当社員や経営層は少なくないようだ。
大企業の8割超が「自社のデジタルスキルに課題がある」と回答。「IT人材採用」に関し経営層と現場で認識差も

デジタル化推進の目的は「業務効率化」が最多

また、自社のデジタル化推進を考えている人を対象に「デジタル化推進の目的」を尋ねている。その結果、「業務効率化」が45.9%で最も多く、以下「働き方改革の一環」が31.9%、「社員の生産性向上」が31.4%などと続いた。多くの企業が、効率的で柔軟な働き方の実現に向け、デジタル化推進を重要視していることがうかがえる。
大企業の8割超が「自社のデジタルスキルに課題がある」と回答。「IT人材採用」に関し経営層と現場で認識差も

デジタルスキルアップを実施中または検討中の企業が6割超

続いて、社員・部下教育、福利厚生担当社員および会社経営者・役員(計500名)を対象に、「自社のデジタルスキルアップのための研修」について尋ねた。すると「現在実施している」が35.4%、「過去に実施しており、再度実施を検討している」が23.2%となり、「実施したことはないが、実施を検討している」の4.2%を含めると、現在、実施中および実施を検討している企業は合計62.8%に上った。デジタルスキルアップの必要性を実感している企業が多いことがうかがえる。

具体的な研修方法について聞くと、「現在実施中」で最も多かったのは「社内のOJT」で27.2%、以下「自律学習支援」が21.6%、「講師がいる研修の実施」が19.6%と続いた。
大企業の8割超が「自社のデジタルスキルに課題がある」と回答。「IT人材採用」に関し経営層と現場で認識差も

デジタルスキル研修を「実施して良かった」が6割

さらに、「勤めている企業でデジタルスキルアップのための研修を実施したことがある」とした342人を対象に、研修を実施した感想を尋ねた。その結果、「研修を実施してよかった」が20.5%、「どちらかというと研修を実施して良かった」が40.4%で、合計60.8%が「実施して良かった」と実感していることがわかった。

「実施して良かった」とした回答の合計を企業規模・役職別でみると、大企業の教育担当者では65.9%、中小企業の教育担当者では53.8%、会社経営者・役員では62.5%となった。
大企業の8割超が「自社のデジタルスキルに課題がある」と回答。「IT人材採用」に関し経営層と現場で認識差も

研修効果として「業務効率化を実感」との声

同様に、デジタルスキルアップ研修を実施したことがある人を対象に「デジタルスキル研修の効果」について聞いた。すると「業務効率化に繋がった」が26%で最も多く、以下「デジタルスキルの必要性の理解が深まった」が21.3%、「社員の自発的学習が増加した」が20.2%などと続いた。
大企業の8割超が「自社のデジタルスキルに課題がある」と回答。「IT人材採用」に関し経営層と現場で認識差も
本調査では、デジタル化推進の必要性を実感している企業が多くある一方で、社内のデジタルスキル格差やIT人材不足などのハードルから、推進を実行できていないケースも一定数あることが浮き彫りとなった。多様な働き方の実現がますます求められるニューノーマル時代では、現場だけでなく経営層が自社のデジタル化推進状況を把握し、それに応じた対策を進めることが求められるだろう。