2022年分以降の「勤続5年以下の退職金減額」は“働く意欲”に影響するのか。税制改正による影響の認知度はいまだ上がらず

株式会社日本マーケティングリサーチ機構(以下、JMRO)は2022年1月28日、「退職金制度」に関して実施したインターネット調査の結果を発表した。調査期間は2022年1月1日~25日で、日本全国の10~70代の男女1,030名から回答を得た。これにより、2021年の税制改正による、勤続5年以下の退職金に対する影響の認知度や、退職金減額による「長く働く意欲への影響」などが明らかとなった。

5割以上が「現在の仕事を5年以上継続したい」との意向

2021年の税制改正により、2022年分から、役員を除く「勤続年数が5年以下の労働者」に対する退職金の計算方法が変更となる。これにより、上記の対象者は実質的に退職金が減額されることとなった。この税制改正による「退職金の減額」は、ビジネスパーソンの“働く意欲”にどのような影響を与えているのだろうか。

まずJMROが、「今の仕事を5年以上続けようと思うか」と尋ねると、56.04%が「続けようと思う」と回答し、過半数が「現在の仕事を5年以上続ける」との意向を持っていることがわかった。他方で、「続けようと思わない」が17.08%、「どちらでもない」が26.88%となった。
2022年分以降の「勤続5年以下の退職金減額」は“働く意欲”に影響するのか。税制改正による影響の認知度はいまだ上がらず

「2022年分以降の退職金減額」の認知度は2割未満に

続いて、「2022年分以降、勤続5年以下の人の退職金が減る事を知っているか」という質問に対しては、「知っている」は19.59%と2割以下にとどまり、「知らなかった」が80.41%と8割を超えた。
2022年分以降の「勤続5年以下の退職金減額」は“働く意欲”に影響するのか。税制改正による影響の認知度はいまだ上がらず

退職金減額に伴い「今の仕事を5年以上続ける意向」にやや変化か

また、同社が「退職金減額をうけて、今の仕事を5年以上続けようと思うか」と聞くと、「5年以上続けようと思う」が60.14%で最多となり、最初の質問の56.04%を約4ポイント上回った。そのほか、「5年以上続けようか悩んでいる」が15.49%、「5年以上続けたくない」が10.25%、「なるべく早く辞めたい」が12.3%となった。
2022年分以降の「勤続5年以下の退職金減額」は“働く意欲”に影響するのか。税制改正による影響の認知度はいまだ上がらず

現時点では退職金減額による「長く働く意欲」への影響は限定的か

「退職金減額による、長く働く意欲への影響」に関する質問に対しては、「あまり変わらない」の58.09%が最多回答で、「退職金減額」と「長く働く意欲」が必ずしも直結しない人が約6割となった。他方で、「意欲がとても上がった」(17.31%)、「意欲が少し上がった」(12.3%)など、「長く働きたい」と考える人が3割に迫る結果に。また、「働く意欲が少し下がった」(5.47%)、「働く意欲がとても下がった」(5.69%)と、「意欲低下」を訴える人も1割程度おり、退職金減額による長く働く意欲への影響は、置かれた状況やケースによってさまざまであることがうかがえる結果となった。
2022年分以降の「勤続5年以下の退職金減額」は“働く意欲”に影響するのか。税制改正による影響の認知度はいまだ上がらず
「勤続5年以下の場合の退職金減額」については、まだ税制改正による退職金の計算方法の変更が適用されたばかりということもあり、認知度が低く、現時点での「長く働く意欲」への影響は限定的なものだといえそうだ。今後の状況を確認しながら、自社にとって適切な退職金制度のあり方を検討していきたい。