人材確保に向けて「賃上げ」を実施する中小企業が増加。アフターコロナに向けた人材獲得における賃金引き上げの重要性とは

株式会社ネットオン(以下、ネットオン)は2021年12月16日、中小企業の採用動向と賃金引き上げへの対応状況の把握を目的として実施した、「賃金に関するアンケート調査」の結果を発表した。調査期間は2021年12月2日~8日で、同社が運営する採用業務クラウドを利用する事業所の人事・労務担当者409名から回答を得た。これにより、新型コロナウイルス感染症収束後に向けた、中小企業の採用活動や賃金引き上げの実態などが明らかとなった。

9割近い中小企業が採用活動を実施

新型コロナウイルス感染症の流行収束後に向けて、採用活動を強化する企業が増えるとともに、平均時給の引き上げが話題となっているが、中小企業では採用や賃金引き上げをどのように考えているのだろうか。

はじめにネットオンは、「現在の採用活動状況」を尋ねている。その結果、「はい(採用活動をしている)」が87.8%となり、多くの中小企業が人材確保に向けて動いていることが判明した。
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緊急事態宣言解除後に「賃上げ」を実施する企業が3割以上に

続いて、現在採用活動をしている事業所に対して、「緊急事態宣言解除後(2021年10月以降)の賃金の引き上げの実施状況」を質問している。すると、「はい(引き上げをした)」とした事業所は35.1%となった。採用活動を行う中小企業の3割以上が、緊急事態宣言の解除後の2021年10月以降に賃金を引き上げていたことが見て取れる。
人材確保に向けて「賃上げ」を実施する中小企業が増加。アフターコロナに向けた人材獲得における賃金引き上げの重要性とは

賃上げの理由は「最低賃金の改定」や「人材確保」

また同社は、「賃金の引き上げ理由」について尋ねている。その結果、最も多かったのは「最低賃金が改定されたため」で61.9%となり、「人材確保のため」が50.8%で続いた。さらに、3位に「従業員の定着率向上(引き留め)のため」が25.4%でランクインするなど、「人材確保・定着」に関わる回答が多数となり、賃金アップの効果に期待する事業所が多いことがうかがえる。
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1年以内の賃上げを予定している事業所が約4割

続いて、緊急事態宣言解除後に賃上げをしなかった事業所に対して、「今後の賃上げの予定」について聞いた質問では、今後1年以内に「上げる予定」が、合わせて37.8%という結果だった。前述の回答と合わせると、採用活動中の事業所の6割近くが、「賃上げ実施済み」または「今後上げる予定」であることがわかった。同社は、「人材獲得における賃金の重要性を意識して、採用に取り組む企業が多い」と推測している。
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採用活動未実施でも、再開時に「賃上げを予定」が2割超に

さらに、現在採用活動を行っていない事業所に対しての「採用活動再開後の賃上げ予定」に関する質問については、24%が「はい(する予定)」と回答している。

前述の結果と合わせると、全事業所の55.3%が、「賃上げ実施済み」、「今後上げる予定」、「採用活動再開時に上げる予定」のいずれかと回答した。現在の採用活動の実施状況に関わらず、回答企業の半数以上では、「賃上げを重視している」状況が見て取れる。
人材確保に向けて「賃上げ」を実施する中小企業が増加。アフターコロナに向けた人材獲得における賃金引き上げの重要性とは

「賃上げ」以外の手段で人材獲得を目指す企業も

また、賃金を上げる予定のない事業所に対して、「その理由」を尋ねている。その結果、最多となったのは「業績の向上(回復)が見込めていないため」で39.8%となった。

その一方で、2位と3位には「賃金を上げなくても人材確保ができているため」(26.3%)と、「他社・他店が上げていないため」(17.5%)が続いた。人材獲得の手段としての賃上げについて、必要性を感じていない事業所も少なくないことが読み取れる。
人材確保に向けて「賃上げ」を実施する中小企業が増加。アフターコロナに向けた人材獲得における賃金引き上げの重要性とは
最後に同社は、「人材獲得のための工夫」について、自由回答で尋ねている。すると、「短時間勤務やフレックスタイム制の導入」、「休日の増加、有給休暇取得の義務化」といった“労働環境の改善”に関する回答や、「資格取得のサポート」、「福利厚生サービスへの加入」などの“福利厚生面の充実”に関する回答、「SNSの活用」や「募集条件の緩和」などの“求人手法の工夫”に関する回答などがあがった。

アフターコロナの人材獲得に向け、賃金引き上げをすでに実施している、または実施する見込みの中小企業が多数であることがわかった。採用を強化するためには、「賃上げ」を含めた労働環境の改善や福利厚生の充実など、働き手にとって魅力ある施策の実施が求められていきそうだ。