「研修・育成」で重視するテーマ、大企業を中心に「女性リーダー育成」を重視する傾向が調査で判明

一般社団法人日本能率協会は2021年10月18日、「当面する企業経営課題に関する調査」の中から“研修・人材育成において重視しているテーマ”についての結果を発表した。この調査は、1979年から経営者を対象に実施されており、企業の経営課題から、今後の経営指針や施策の方向性を探ることを目的にしているという。2021年(第42回)の調査期間は2021年7月20日~8月20日で、全国の517社から回答を得た。これにより、企業経営者が感じている人材育成の課題が明らかとなった。

各企業とも「階層別研修」を重視する傾向。トップは「中堅社員向け」で87.8%が回答

はじめに18項目の「研修および人材育成テーマ」を挙げ、それぞれについてどの程度重視しているかを6段階で尋ねている(6段階の選択肢:「非常に重視している」、「重視している」、「やや重視している」、「あまり重視していない」、「重視していない」、「まったく重視していない」)。結果から『重視している』「非常に重視している」、「重視している」、「やや重視している」を合計した値が多かった項目は、「中堅社員の業務遂行能力の向上」(87.8%)、「新入・若手社員の業務遂行能力の向上」(86.3%)、「課長層のマネジメント力の向上」(85.9%)となった。いわゆる「階層別での研修」がトップ3に並んだ。また、「部長層のマネジメント力の向上」についても80.1%と高い値を示した。

また、「ハラスメント研修」(80.2%)、「コンプライアンス研修」(81.4%)も共に8割を超え、「法令順守に関わる研修」も重視されていると判明した。
「研修・育成」で重視するテーマ、大企業を中心に「女性リーダー育成」を重視する傾向が調査で判明

大企業が特に注力する「女性リーダー育成」と「ダイバーシティの理解促進」

次にこの回答を選択肢ごとに数値化し、その平均値を企業規模別に集計(選択肢ごとの得点:「非常に重視している」=6点、「重視している」=5点、「やや重視している」=4点、「あまり重視していない」=3点、「重視していない」=2点、「まったく重視していない」=1点)した結果を紹介する。先ほどの質問で第1位の「中堅社員の業務遂行能力の向上」は大企業:4.84、中堅企業:4.75、中小企業4.55であった。第2位の「新入・若手社員の業務遂行能力の向上」は、大企業:4.90、中堅企業:4.75、中小企業4.51、第3位の「課長層のマネジメント力の向上」は、大企業:4.98点、中堅企業:4.86点、中小企業:4.57点となった。これらは、企業規模を問わず重視していることが分かる。

大企業と中小企業で平均点に大きな差が見られた項目が二つあり、一つは「ダイバーシティの理解」(全体の重視度)。大企業は4.53、中小企業が3.56で差異は0.97ポイントとなった。もう一つが「女性リーダーの育成」で、こちらは大企業4.73、中小企業3.79の差異0.94ポイントであった。大企業は、女性登用比率などの情報開示が法改正により求められているためか、「女性リーダー育成」や「ダイバーシティ促進」に積極的に取り組んでいるようだ。
「研修・育成」で重視するテーマ、大企業を中心に「女性リーダー育成」を重視する傾向が調査で判明
今回の調査では、企業規模を問わず多くの企業が「若手」「中堅」「課長職」などを対象とした「階層別研修」に力を入れていることがわかった。人材難が深刻化する現代において、「育成」を通して企業の組織力をいかに高めていくかが、ますます重要になりそうだ。