「経営者向けワーケーションプログラム」による実証実験を、東急リゾーツ&ステイ、信州大学らが協働で開始。期待できる効果とは

東急リゾーツ&ステイ株式会社(以下、東急リゾーツ&ステイ)は2021年10月7日、株式会社東急不動産R&Dセンター(以下、東急不動産R&Dセンター)、信州大学 人文学部、信州大学 学術研究・産学官連携推進機構(併せて以下、信州大学)、NPO法人 熟年体育大学リサーチセンター(以下、熟年体育大学リサーチセンター)と協業し、主に経営者を対象とした、ワーケーションの効果に関する実証実験を行うと発表した。これにより、企業におけるワーケーションの導入促進に貢献したい考えだ。

「経営者が価値を実感できていない」ことが、ワーケーション導入における本質的な課題

近年、テレワークの普及や、各地域における関係人口創出のニーズ拡大などを背景として、「ワーケーション」が注目されている。その実施にあたっては、地方自治体・宿泊施設・リゾート施設等の「受け入れ側」と、個人や企業といった「実践側」の両立場が存在する。しかし、受け入れ側のモチベーションに比べ、実施側のワーケーション導入が思うように進んでいないのが現状だ。

2020年に株式会社日本旅行が実施した「『ワーケーション』に関する考え方・取組みの実態調査」では、「自社でのワーケーション導入に興味がある」経営者は50.4%、「テレワーク実践中で、ワーケーションに興味がある」会社員は62%と、ともに過半数に。しかし、「実際にワーケーションを導入している」企業は、会社員の回答では0.6%、経営者の回答では2.0%にとどまり、「自社に導入される確率は低いと感じる」会社員は68.5%もいることが判明している。また、導入にあたっては、「既存の労務管理方法との乖離」、「テレワーク環境構築コスト」、「情報セキュリティリスク」などといった課題が浮き彫りとなった。

しかし、既にワーケーションを導入している企業も一定数あることから、これらの課題の他に、より本質的な課題が存在する可能性も考えられる。このような状況をもとに、東急リゾーツ&ステイおよび東急不動産R&Dセンター、信州大学、熟年体育大学リサーチセンターは、「経営者がワーケーションの価値を実感できていない」点が、企業でのワーケーション導入が進まないことの本質的な原因であるという仮説を立てた。現存のワーケーションプログラムには、経営者を対象としたものが非常に少ないという現状のなか、経営者がその価値を実感する機会を創出することで、企業でのワーケーション導入を促進できる可能性があるとの見方を示した。

リゾートワーケーションプログラムにより、「コミュニティ形成」と「レジリエンス向上」を図る

この仮説を検証するため、4者は経営者を対象とした新たなリゾートワーケーションプログラムを考案。この中で、「日常業務とは異なる視点から経営者の学び直しを促すリカレント教育」、「孤独に陥りがちな経営者のコミュニティ形成」、「潜在的な健康不安を抱える経営者の健康づくりを支援するレジリエンス向上」の3つの目的を主軸として、経営課題解決の促進と心身の健康回復・向上を目指す、経営者向けプログラムを構築していくことを決定した。

今回の実証実験では、経営者向けリゾートワーケーションプログラムの一部を考案し、参加者を募集。主軸となる3つの目的のうち、「コミュニティ形成」、「レジリエンス向上」に関するプログラムを実践する。開催日程は、2021年11月8日(月)~9日(火)で、想定対象者は中小企業の経営者および企業の部門長。プログラムは「参加者による対話ワークショップ」、「通常業務」、「インターバル速歩」等で構成される。

このプログラムの効果検証にあたって、ワーケーション実施前・実施中・実施後の各タイミングで、心理・感情指標に関するアンケートおよび心電図等の生理指標の測定などからデータを取得する。これらのデータ分析を通じて、本プログラムおよび実施施設となる東急リゾートタウン蓼科のワーケーション環境が、参加者の“心理”、“感情”、“生理”的側面に与える効果を、信州大学 人文学部との共同研究によって試験的に検証していくという。この結果を踏まえ、今後はより効果の高い経営者向けリゾートワーケーションプログラムの開発につなげていく考えだ。

働き方の多様化から注目を集める「ワーケーション」だが、企業への導入にはさまざまなハードルがあるようだ。経営者の認識が変わることで、ワーケーションはさらに広まっていくのか、その効果にも注目が集まりそうだ。