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表に現れない労務リスクの怖さ(下)

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「表に現れない労務リスクの怖さ」と題し、2部構成により、労務コンプライアンスの観点から、労務リスクの怖さについて考えているところであるが、ここで前回までの流れを振り返っておこう。
前回は、「労務リスク」について考えるとともに、会計分野のような決算書が存在しない人事労務分野においては、このリスクが視覚化されないため、問題として認識する機会が少ないことを確認した。その上で、これらを放置すれば、労務問題として顕在化するのみならず、昨今、中小企業にまで広がりつつある合併・事業譲渡の際、企業価値を目減りさせてしまうことに繋がる危険性を指摘した。
引き続き、後半においても、労務リスク問題の怖さを考えていくこととしたい。

ヒトもカネに影響する

経営の三要素であるヒト・モノ・カネのうち、カネに目を配る経営者は圧倒的に多い。筆者はこれ自体が悪いことだと思わない。綺麗事はいくらでも言えるが、事業を営む上でカネは絶対であり、これがなければ経営は成立しないからだ。カネが無ければ、モノもヒトも確保できない訳で、安定的で持続した企業経営を行うことは難しくなる。

しかし一方で、カネだけを考えればよいというものでもない。労務リスクは、ヒトに関係し、放置すればカネに影響を与える一要因となり得るからだ。それも、カネを生み出すのではなく、カネを減少させる方向で影響を与えるから質が悪い。

だからこそ、自社の労務リスクを定期的に振り返る機会を持つことが重要となる。日々の数字は、毎月々の試算表や期末の決算書で注視していることだろう。したがって、経営管理という全体像で捉えるならば、財務管理だけでなく、労務管理についても同程度に注視すべきなのである。

人事労務管理にも監査を

では、どのようにして人事労務管理に注意を払うべきだろうか。

その一つの手法として、社会保険労務士等の外部専門家による「人事労務監査」がある。これは、労働関係諸法令の観点から、主に①募集・採用、②配置・異動、③服務規律、④勤怠状況、⑤給与・賞与、⑥安全衛生、⑦福利厚生といった人事労務管理分野全般について、その管理が適正か否かを把握するものである。ここで不十分だと示された項目が出た場合、それが自社の労務リスクであり、解決すべき課題として明確になる。

もう一つ、簡易的なものとしては、全国社会保険労務士会連合会が実施する「労務診断ドック」がある。①36協定締結の有無や、月の残業時間数が限度基準として示された枠内におさまっているかにはじまり、②給与、③年次有給休暇、④健康管理、⑤育児・介護休業制度、⑥病気療養中の社員に対する就労の配慮、⑦非正規労働者の雇用環境整備、⑧女性が活躍しやすい環境整備をしているか、⑨定年再雇用者への環境整備といった項目から、2~3の質問を確認していくことで自社の現状を把握することができる。最初から人事労務監査はハードルが高いと感じる企業には、活用をお勧めしたい。

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