取締役と従業員の身分保障や責任の違い
このような取締役と従業員の契約関係の違いは、身分保障や契約対価への保護、あるいは責任の幅などに表われている。
例えば、会社側から従業員を解雇する場合には、「合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が法的に要求されている(労働契約法16条)。これに対して、取締役と会社との委任契約の世界では、契約の「相互解除の自由」という原則がある(民法651条)。
委任契約は、相互の信頼関係を基本とする契約であるから、信頼が失われたときは、どちらからでも自由に解約することができる。会社法が、「役員はいつでも株主総会の決議によって解任することができる。」(会社法339条)と明記しているのは、その表れである。つまり取締役には、従業員のような手厚い身分保障は一切ないといってよい。
次に、契約の対価たる「賃金」や「報酬」について見てみよう。従業員には労働基準法で「賃金」の支払いに関して手厚く保護されている。通貨払い、直接払い、全額払い、毎月1回以上払い、一定期日払いの5原則である。また、例えば会社が倒産したような場合には、「賃金」の「先取特権」が認められている。
これは、労働契約から生じた従業員の債権は、会社の他の一般債権者に優先して支払ってもらえる権利である。一方、取締役には、従業員に認められているような保護や権利はなく、委任契約に基づいて、会社から「報酬」の支払いを一般債権者として受けるだけである。
そのほか、取締役は、会社(株主)に対する責任はもとより、従業員に対する責任、第三者に対する責任、社会に対する責任など、多様で重い責任を負っている。対して、従業員には、労働契約の債務不履行あるいは不法行為に基づき会社に損害を与えた場合に、賠償責任が生ずる可能性がある。しかし、労働者が業務の遂行に当たり会社に損害を与えた場合、故意または重大な過失による場合を除き、労働者の損害賠償責任は問われなかったり制限されたりするのが裁判所のスタンスである。
例えば、会社側から従業員を解雇する場合には、「合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が法的に要求されている(労働契約法16条)。これに対して、取締役と会社との委任契約の世界では、契約の「相互解除の自由」という原則がある(民法651条)。
委任契約は、相互の信頼関係を基本とする契約であるから、信頼が失われたときは、どちらからでも自由に解約することができる。会社法が、「役員はいつでも株主総会の決議によって解任することができる。」(会社法339条)と明記しているのは、その表れである。つまり取締役には、従業員のような手厚い身分保障は一切ないといってよい。
次に、契約の対価たる「賃金」や「報酬」について見てみよう。従業員には労働基準法で「賃金」の支払いに関して手厚く保護されている。通貨払い、直接払い、全額払い、毎月1回以上払い、一定期日払いの5原則である。また、例えば会社が倒産したような場合には、「賃金」の「先取特権」が認められている。
これは、労働契約から生じた従業員の債権は、会社の他の一般債権者に優先して支払ってもらえる権利である。一方、取締役には、従業員に認められているような保護や権利はなく、委任契約に基づいて、会社から「報酬」の支払いを一般債権者として受けるだけである。
そのほか、取締役は、会社(株主)に対する責任はもとより、従業員に対する責任、第三者に対する責任、社会に対する責任など、多様で重い責任を負っている。対して、従業員には、労働契約の債務不履行あるいは不法行為に基づき会社に損害を与えた場合に、賠償責任が生ずる可能性がある。しかし、労働者が業務の遂行に当たり会社に損害を与えた場合、故意または重大な過失による場合を除き、労働者の損害賠償責任は問われなかったり制限されたりするのが裁判所のスタンスである。
取締役を再認識しよう
日本では、従業員から取締役に昇進する例が多く、従業員と取締役を兼務する「使用人兼取締役」も多いので、つい取締役を従業員の延長線上で考えてしまいがちである。しかし、これまで述べてきたように、従業員と取締役は全く別の地位にあり、その責任も大きく異なる。すでに取締役の方も、これから取締役になる方も、取締役という会社の機関に習熟しておくことが必要不可欠と思う次第である。
株式会社WiseBrainsConsultant&アソシエイツ
社会保険労務士・CFP(R)
大曲義典
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