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副業・兼業の諸問題を考える(下)

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全2回にわたり、副業・兼業に潜む問題点について労務管理の視点から考えているところであるが、前回までの内容を振り返っておこう。前回は、副業のメリットについて触れるとともに、副業を解禁することの問題点として、現行法上の労働時間管理の煩雑さについて述べた。今回も、問題の続きを考えていくこととしたい。

労災事故における諸問題

例えば、副業先のB社で不慮の労災事故が発生し、被災労働者が数か月間の休業を余儀なくされたとする。こうしたケースにまつわる問題を考えてみよう。

一般的に副業先の方が勤務時間数も短く、受け取る給与も少ないことが想定される。労災保険の休業補償は、事故直近3か月の平均給与額を基準として給付されることから、少ない給与水準で算出された所得補償が受けられるに過ぎない。したがって、本業の方で高い給与を受けていたとしても、副業先の労災事故である以上、休業補償に加味されない。最低保障額が設けられているとはいえ、1日あたり3,920円(平成29年8月1日~平成30年7月31日まで)である。言ってみれば、労災事故によって途端に生活が困難となるリスクを孕んでいる(これは、障害、遺族補償においても同様のことが言える)。これが一つ目の問題だ。

第二に、外的要因であるケガ等の労災事故だけでなく、脳・心臓疾患、精神疾患の扱いをどのように考えるべきか問題が残る。副業をすれば、勤務時間・拘束時間は長時間なものとなりやすい。比例して心身への負担も増加すると考えられる。もし、突然労働者が倒れてしまった場合、本業・副業どちらの業務に起因した事故であるかの判断が難しいという問題がある。

第三は、前回で述べた労働時間管理の問題と絡むが、過重労働を防止することが困難であるという点だ。そもそも、労働者が真正に他社の就労時間数を申告していなければ、自社で正確な勤務時間を算定しても限界がある。それに、申告した時間数よりも多く他社で就労していれば、当然だが疲労は蓄積されていく。業務中に居眠り運転等で第三者を加害した場合、被害者に対する使用者責任は免れない、というリスクとも隣り合わせにある。どちらの企業がその責めを負うべきなのだろうか、これも悩ましい問題だ。

副業解禁前に仕組み作りが先決!

このように、長時間労働と労災事故は相関関係にあるにも関わらず、副業解禁に踏み切る前に検討しなければならない安全衛生上の問題は、置き去りにされたままである。これらの労務リスクは、労働者又は第三者の生命身体に関わるものであり、実際に起きてからでは取り返しのつかない問題である。

誤解を恐れずに言うならば、未払い給与という問題に対する解決策は、未払い分を支払うことによって解決できよう。しかし、重篤な障害を負った場合や、命を失ってしまった場合は取り戻すことができない。詰まるところ、このようなケースでも法的には金銭補償により解決することになるが、生命・身体に関わる問題は、根本解決に至らないことが他の労務リスクと決定的に異なる点である。であるがゆえに、国は使用者に対して安全配慮義務(労働契約法5条)を求めているのではないか。

これまで度重なる改正が行われてきたとはいえ、労働基準法も労働者災害補償保険法も、戦後間もない1947(昭和22)年にできた法律である。時代的に製造業を中心に考えられており、サービス業が中心となっている現在とは馴染まないところがある。

また、終身雇用慣行が機能していた当時は、定年まで一つの会社で勤め上げるのが一般的であり、副業を想定したルールとは言い難い。したがって、実態に合ったルールに改正した上で副業を推進していくべきであって、現在のやり方では順序が逆である。ルールの整備なくして副業を推進していくことは、先で述べた重要な諸問題が想定される以上、認めるべきではない。

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