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これからの生産性を考える

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 政府が「働き方改革」を提唱し、大手広告代理店や新国立競技場建設に伴う過労死自殺問題も相まって、日本の働くあり方に大きなうねりが起きている。人口減少による働き手が減少しているという事実も大きい。厚生労働省管轄の助成金内容を確認すると、国の今後の考え方を窺い知ることができる。この助成金は、雇用保険料のうち企業が負担する一部分を財源としているものだが、政策的な観点から助成金の中身は年度毎に見直されている。本年度の助成金に係る受給要件をみてみると「生産性要件」というものが追加されたことがみてとれる。この厚生労働省が定義する生産性要件が興味深い。今回は、これを基に生産性とスキルマップの活用を考えてみたい。

生産性要件とは?

 まず、生産性を持ち出す背景を考えてみよう。それは少子高齢問題にある。労働力人口が減少の一途を辿るなかで、一人あたりの生産性を高めることができなければ、持続可能な経済成長を実現できないからだ。そこで厚生労働省では、この生産性向上の指標を次のように定義している。

“(人件費+減価償却費+動産・不動産賃借料+租税公課+営業利益)÷雇用保険被保険者数”

 この計算式に従って得られる生産性を、直近とその3年度前の会計期間で比較し、原則として6%以上の生産性アップが確認されれば、通常の額にプラスした助成金を交付するとしている。すなわち、この式からわかることは、社員の給与や設備投資額を減らしても、生産性が向上したとは判断されないということである。あくまでも厚生労働省が定義する生産性という条件がつくものの、人件費を下げて生産性を向上させる(したように見せかける)という手法は通用しない。

限られた時間内でより多くの利益を!

 すなわち、社員個々人の給与や、設備投資額を増やしていかねばならないということである。昨今では、人材採用難という事態を受けて、非正規社員を正社員登用して囲い込み、給与格差是正に動く企業も見受けられる。これも全社的にみると給与の底上げを図ることに繋がるため、厚生労働省のいう生産性要件に合致した考え方と言えるだろう。設備投資としては、業務ソフト等の導入が挙げられる。いわゆる巷で言われているIT化である。紙ベースで行われていたものがIT化によって他の情報との一元化が図れれば、より業務の効率化が図られるからだ。
 一方、周りをみれば、冒頭で触れたように、行政をはじめとして長時間労働に対する問題意識は社会的な広がりをみせている。政府は、働き方改革実行計画のなかで、残業時間の上限を月100時間未満とする決定をした。働き手が減っていく中、従来は時間あたり100の成果を生み出していたとするならば、稼働時間を減らし、105、110の成果を上げられる組織にしていかなければ先がないことは確かである。

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