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ついに会長職を退任 フジテレビと日枝久の30年

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ライブドア事件で完成した「日枝体制」

 2005年、堀江貴文氏率いるライブドアがニッポン放送株を買い占める。当時、ニッポン放送はフジテレビの筆頭株主であり、ニッポン放送を通じてフジテレビを支配しようともくろんだ。この時、日枝氏は先頭に立って堀江氏と対決、結果的に和解に持ち込み、フジサンケイグループを守ることに成功した。そしてこれをきっかけに日枝氏は、資本のねじれ解消に向け動き始める。

 こうして08年に誕生したのが持ち株会社、FMHで、フジテレビもニッポン放送も産経新聞社も、すべてFMHの完全子会社となった。日枝氏はFMHおよびフジテレビの会長に就任、フジサンケイグループ代表も務めるなど、名実ともに同グループに君臨する形となった。日枝氏のグループ支配の完成形だ。しかも当時は視聴率三冠王も継続中。業績的にもFMHは民放各局の中で売り上げ、利益ともにトップにあった。これが日枝氏の絶頂期だ。

 しかしそれも長くは続かなかった。前述のように11年に日本テレビが三冠王を奪還すると、そこからはつるべ落とし。視聴率、業績とも低迷するようになる。

 どんな優れた経営者であっても、権力の座に長くい続けると、さまざまな弊害、歪みが生じるのは避けられない。絶対的権力者がいることで、社員の目は、ユーザーではなく権力者に向いてしまう、というのもよくある話だ。フジテレビも例外ではなかった。

 民放三番手だったフジテレビが三冠王の常連となったのは、鹿内春雄氏の号令のもと、俗悪と言われようとも徹底して視聴者受けする番組づくりを貫いたからだ。深夜に実験的な番組づくりをするなど、とにかく挑戦的だった。フジテレビなら面白いことができると、若い放送作家や制作会社が集まり、それがさらなる刺激的な番組につながった。

 今はその対極にある。過去の成功体験が大き過ぎるためか、焼き直しのような番組ばかりが並んでいる。「フジテレビに企画を持っていっても採用されない。だから面白い企画であればあるほど、まずは他局にもっていく」という放送作家の言葉が、今のフジテレビの状況を何より雄弁に物語っている。

 今回、日枝氏が会長を降りたことでフジテレビが活性化するかどうか。会長ではなくなったとはいえ、取締役には残り、グループ代表を続けることから「日枝院政に過ぎない」との見方も強い。新社長も73歳と高齢なため、本格的な再建はさらに次の社長に託されることになりそうだ。視聴率を上げるには下がる時よりはるかに長い時間と労力がいる。復活への道は容易ではない。


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