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停滞かそれとも飛躍への助走か 元年が過ぎた後のVR業界

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消費者との距離感を重視

 モバイルVRは、今後もコンテンツが拡大し、さまざまな用途で使われると思われるが、そうなると気になるのはVR元年の牽引役として期待されたハイエンドVRだ。業界では、PS VRをはじめハードが普及せず、ヒットソフトも生まれなければ、VRへの関心が薄れていくのではないかとの危機感がある。

 現状でハイエンドVRについては期待外れの感があるが、新しい体験を提供する新しいハードウエアという観点で、3Dテレビになぞられる向きもある。3Dテレビは10年頃から各メーカーがこぞって3Dテレビを開発、販売を開始した。しかし現実には、12年あたりをピークに3Dは下火になり、次々と3Dテレビの販売が終了していった。

 3Dテレビのブームがあっという間に過ぎ去った記憶が新しいだけに、VRが比較されるのも無理はない。しかし、そのブームは、メーカーサイドから意図的に作りだしたという側面がある。3Dテレビの発売が相次いだ10年頃は、地上デジタルテレビへの買い替え需要が一巡し、テレビメーカーは新たな需要を創出する必要があった。3Dテレビが本当に消費者の望んだ商品であったのかは疑問が残る。また、家庭用に導入された3Dテレビは、専用メガネを装着する煩わしさがあった上、高価であり利用のハードルも高かった。こうしたことから、より高解像度の4Kテレビの登場に伴い、3Dテレビは姿を消すことになった。

 3Dテレビ終焉の要因とVRの置かれている状況を比較すると、VRは消費者が利用するハードルが低い。もちろんハイエンドVRは高価だが、モバイルVRについては、ほぼ1人1台レベルに普及したスマホを利用できることを考えると、VRの体験はより安価かつ容易だ。また、消費者側がVR映像を発信することもでき、VRは3Dテレビに比べると、消費者に身近な存在だ。そして、モバイルVRを体験した層が、より高品質なVRを求めて、ハイエンドVRに移行する動きがある。

 ここで重要なのは、体験を増やすこと。そこで業界の流れとしては、VRへの期待をつなぎとめる意味で、ハイエンドVRに触れる機会を増やす動きがある。

 昨年から、タッチポイントという意味で、アミューズメント施設へのハイエンドVRの導入は積極的に行われてきた。昨年には既にサンシャイン池袋の「スカイサーカス」、大阪のユニバーサルスタジオジャパンのアトラクション「VRコースター」などに導入され、VRの認知向上に一役買ってきた。現在もなお、こうしたアミューズメント施設への導入は広がっている。

 また、アミューズメント施設の展開はソフトメーカーにもメリットがある。アトラクションのコンテンツは概ね約10分で、この程度のボリュームならば制作は比較的容易だという。それでいてユーザーから1回500円~1千円程度の利用料金を回収できるため、現状の収益性は高い。PS VRのような家庭用のハイエンドVRの普及も継続していくが、ハイエンドVR機器を買えない人、買わない人に向けてアミューズメント施設での展開に注力する動きも広がっている。こうした取り組みを通して、最終的にはキラーコンテンツの登場を待つことになる。

 モバイルVRは今後も地道に裾野を広げていくと思われるが、ハイエンドVRの普及にはもう少し時間がかかりそうだ。

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