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女性の働くを科学する~7,500人の調査結果から見えてきた女性活躍推進のカギとは~

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女性活躍推進に有用なツール「トランジションマップ」

 これを受け、トーマツイノベーション株式会社 人材戦略コンサルティング第一事業部 事業部長 川合真美氏が、上記の共同研究により同社が開発した「トランジションマップ」について発表した。トランジションマップとは、女性社員のポジションに合わせて人事部や管理職がどのように支援をすればよいのかが一目でわかるマップのことだ。これは今回の同社と中原准教授の共同調査結果の成果としてまとめられたものである。

 トランジションマップに登場する人物は、人事部・管理職・女性社員・ワーキングマザーが所属する組織のメンバーの4人。これらの人物が女性社員のポジションに合わせてどんなサポートをすればいいのかが具体的に記載してあるため、実際に社内の働き方の見直しに役立てることができる。川合事業部長は「働き方の見直しは女性やワーキングマザーのためのものだけではなく、日本全体が直面している課題の解決策でもあります。そのため、ぜひ組織全体で共有して使ってもらいたいと思っています」と思いを述べた。

女性活躍推進に取り組む企業の事例~トークセッションを通して

 フォーラムの後半では、実際に女性活躍推進に取り組んでいる株式会社プレスク 代表取締役社長 湯浅氏と、同社でこの春職場復帰をしたばかりのワーキングマザーである森氏をゲストに迎え、中原准教授と川合事業部長によるトークセッションが行われた。

 株式会社プレスクは、長時間労働が常態化しているIT業界では珍しく、長時間労働の是正に取り組み、東京都ワークライフバランス認定企業として認定を受けている。同社がワークライフバランスの実現に向けて取り組み始めたのは、2008年、ある男性社員が「育児参加をしたい」と申し出たことがきっかけだったという。同社では今やフルタイムの月平均の勤務時間が150時間程度、有給休暇取得率も100%を達成している。

 パネリストの1人である森氏は、同社で初めて産休・育休を取った社員であるが、妊娠が発覚した当時は出産・育児をバックアップする制度も整っておらず、辞めなければならないのではないかと不安に思ったという。しかし、妊娠を上司に打ち明けたところ、「大変なことや改善してほしいことがあれば、どんどん声を上げてほしい。一緒に制度を作っていこう」と言われ、ほっと胸をなでおろしたそうだ。森氏は「全部が全部思い通りになるわけではありませんが、自分の妊娠を理解して手助けしようという会社側の意思が伝わってきて、とてもありがたかったです」と当時を振り返って述べた。

 同社では他に、有給休暇取得率を上げるために大切な人と過ごすための休暇である「プレシャスホリデー制度」や良い休暇の過ごし方をした社員を表彰する「E-Vacation制度」などのユニークな制度を用意している。また、社内のコミュニケーション活性化のため、3人以上の社員で食事会を開催したときに補助金が出る「飲みニケーションチケット制度」等もある。

 こうした施策により、会社の業績が下がるのではないかという懸念があるかもしれないが、同社の場合は様々な面でプラスのインパクトが出ているという。
 まず、人事面のインパクトとしては、採用活動が非常に順調なことがあげられる。今の学生は待遇面だけでなく、働き方や働く環境に興味があり、面接でもワークライフバランスのことについて質問をしてくるそうだ。また、業績の面でも、品質の向上に比例して売上も順調に伸びているという。

 しかし、まだまだ女性社員の声を吸い上げ、反映してくれるような女性管理職が少ないという課題もある。社内で今後取り組んでほしいことについて、森氏は「今、社内で女性管理職を増やそうとしていますが、女性の目線を会社の経営に取り入れられる方がもっと増えればいいなと思います」と希望を語った。

 湯浅社長は今後、IT業界の中で働きやすい環境づくりをしていきたいという。「昨年から社外に向けて『社外報』を作成し、発信し始めました。しかし、IT業界は長時間労働の厳しい環境というイメージがつきまとっています。そんな中で、パートナー会社さんの中でワークライフバランス認定企業をとっている会社と手を組んで、このIT業界で働きやすい環境をつくっていきたいですね。同時に、IT業界は女性がますます活躍していく業界になっていくのだということも広めたいと思っています」と今後の展望を語った。

 会社の中で女性の活躍推進にどう取り組むかについては、女性だけに解決策を求めることはもはやできない。もちろん女性自身の努力も大切だが、女性がどんなライフステージにいようと、また社内でどんなポジションにいようと、周りがそれをサポートできるような職場環境づくりが重要だ。そのために、今後あらゆる企業には、組織全体で業務全体を可視化し、社員の能力や負担に応じて業務を再配分することを通して、何かあったときにはお互いに助け合い、それが評価されるような風土をつくることが求められてくるだろう。

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経営者・事業部門責任者から部長・課長・リーダー層まで、経営の根幹を支える人たちの成長を支援するパートナーメディアを目指します。日々の業務に役立つニュースや小ネタ、組織強化や経営理論まで幅広く学べる記事を提供します。

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