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経営者の報酬と年金の減額

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 国の年金を受け取りながら企業を経営する人は少なくない。ところで、経営者の受け取る役員報酬の額が今までと同額でも、平成29年度からは年金が減額される可能性があることをご存じだろうか。

年金減額となる基準額が引き下げられた

 国が支給する老後の厚生年金を老齢厚生年金という。この老齢厚生年金は無条件に全額が支払われるわけではなく、働いていることによる収入がある場合には、一定のルールに基づいて減額されることがある。国が支払う老後の年金は、定年退職等による「稼得能力の喪失」を補てんするための制度だからである。具体的には、社会保険に加入して勤務している場合に、「1ヵ月の年金額」「1ヵ月の報酬額」「過去1年間に支給された賞与を12で割った額」の3つの金額を足して国が定めた基準額を超えると、年金の減額が始まる仕組みとなっている。

 年金を減額するかどうかの基準額は、65歳未満の場合には28万円であり、昨年度と今年度とで変更はない。しかしながら、65歳以上の場合の基準額は、昨年度が47万円であったのに対し今年度は46万円とされ、昨年度よりも基準額が1万円引き下げられている。つまり、65歳以上で年金をもらいながら社会保険に加入して勤務している場合には、昨年度よりも年金が減額されやすくなったことになる。

 65歳以上で社会保険に加入して勤務する立場の人といえば、一般的には企業の経営者層が該当するケースが多いであろう。つまり、企業の経営者、役員クラスについては、役員報酬が従前と変わらないにもかかわらず、昨年度よりも年金の受取額が減る可能性があるわけである。

基準額を超えると、超えた額の半額に相当する年金がカット

 たとえば、65歳の企業経営者が前述の「1ヵ月の年金額」「1ヵ月の報酬額」「過去1年間に支給された賞与を12で割った額」の合計額を、昨年度までの年金減額の基準額である47万円ちょうどに調整していたとする。この場合、昨年度であれば基準額をオーバーしていないので、年金は全額受け取ることができた。

 しかしながら、今年度の基準額である46万円に照らし合わせると、基準額を1万円超過することになるので、超過した1万円の半額である5千円が毎月の年金から差し引かれてしまう。月に5千円といえばわずかな金額にも思えるが、年間に換算すると5千円×12カ月=6万円となり、無視できない金額になる。中には、年金のわずかな減額であったとしても「年金をカットされること自体が、どうにも我慢ならない」という方もいる。

 国の年金は原則として偶数月の中旬に支払われる。今年度の年金が最初に支払われるのは6月の中旬であり、このときに4月分と5月分の年金が入金になる。もしも年金の減額基準変更が年金の受取額に影響するとすれば、この6月入金分の年金からということになる。

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