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「トップダウン(上意下達)」について考える

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 近隣の騒音に配慮した愛知県の無音盆踊り、さっぽろ雪まつりで恒例企画の魚氷の中止検討など、昨今は周囲の意見に配慮する傾向が強い。企画運営する上で周囲の意見に耳を傾けることは大切なことだ。だからこれを否定するつもりはない。ただ配慮し過ぎるあまり、大切にすべきものまで失われつつあると感じるのは筆者だけであろうか。転じて、人事労務分野にもコンプライアンスの高まりから同じようなことを思う。その一つが「トップダウン(上意下達)」のあり方だ。中小企業ではトップダウン型の組織であることが多い。ところが、最近は“ワンマン経営・強権的”=“ブラック企業”というイメージが先行し、本来検討すべき観点が置き去りにされているように感じる。そこで本稿では「トップダウン」について考えてみたい。

「トップダウン」は時代錯誤!?

 今の時代に「トップダウン」を持ち出すこと自体が古臭いと思われるかもしれない。確かにやり方を間違えるとパワハラに繋がる危険性がある。もちろんパワハラは絶対にあってはならない。しかし、労働法やハラスメント関連の知識の成熟化に伴い、後先を検討せず何もかもがやれ「パワハラだ!ブラックだ!」と一括りにされてしまうことも事実ではないだろうか。企業もどこかで、コンプライアンスを意識し過ぎるあまり、強く言わなければならない時でもつい躊躇してしまっていることがあるはずである。しかし徹底して言わなければならないこと(企業理念や経営方針、サービス提供の姿勢等々)は、社員が理解し、行動するまで粘り強く繰り返して臨むべき事柄である。いわゆるその企業の基本路線、すなわち基礎(土台)となる部分だからだ。だから、トップダウンと一口に言っても、個別具体的に判断すべきと言えよう。
 にも関わらず、先で述べたように一括りに論じられる面に引きずられ、「トップダウン」であるべきところを弱めたり、代替として「ボトムアップ」に切り替えたりすることは間違っている。なぜなら、トップダウンで企業の基本路線を徹底した先にボトムアップが有効となるからだ。確かに、ボトムアップで多種多様な社員の意見を吸い上げ、企業経営に活かしていると言えば聞こえはいい。しかし、企業の理念や基本姿勢が徹底して教育されていない社員に対して企業がボトムアップを用いることは、いわばトップがやるべきことを放棄して社員に丸投げをしている状態だと言わざるを得ない。基本の枠組みが定まっていないなかで社員の意見を聴くようなことをすれば、各々が好き勝手なことを述べてまとまらないばかりか、まったく関係のない意見まで出て収拾がつかなくなってしまう。だから、杓子定規に「トップダウン」を論じることは危険である。

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