
政府が日本の働き方を見直すために動き始めた。東京都でも残業ゼロを目指した働き方を推進していくことが発表された。伊藤忠商事は数年前から「朝方勤務」を推進し、健康経営といった先駆的な取り組みを実施している。果たしてこの動きはどこまで浸透していくのだろうか。少なくとも筆者は、この働き方改革という潮流は今後企業が受け入れる・受け入れないといった選択可能な代物ではなく、受け入れざるを得なくなるとみている。そこで今回は、この働き方改革について企業経営の観点から考えてみたい。
働き方改革の必要性
政府が働き方改革を推進する背景には大きく二つあると考える。一つはこれから到来する大介護時代を乗り切るため。そしてもう一つは、育児と両立可能な働き方を創出し、出生率を上げていくためだ。先日の厚生労働省の調査によれば、すべての産業において正社員・パートともに不足超過(人手不足)が生じていると発表された(平成28年9月13日付平成28年8月労働経済動向調査結果)。言うまでもなく、少子高齢に伴う労働力人口減少が顕著であることの証左である。既に中小企業では募集をかけても応募がゼロという事態も生じている。しかし、まだまだこの現実を対岸の火事のように捉えている企業は少なくない。
中小企業こそ真剣に考えるべき課題
すなわち、対策をとらなければ近い将来、仕事はあっても、これを担う人が集まらなくて事業閉鎖に陥るという最悪の事態を想定しておかねばならないということだ。横暴に振る舞う経営者ほど、人は代わりが効くと思い込んでいる節がある。足りなければ調達すれば良いと…。確かに一昔前まではそれが通用したかもしれない。しかし先に述べたとおり、人口オーナス期にある日本にとって、この考え方は通用しない。時代の流れに逆行するような働き方(長時間労働・長時間残業、休日出勤等々)をさせる企業からは自然と人がいなくなるからだ。仮に入社したとしてもすぐに辞めてしまうだろう。働き方改革の時流に乗れない企業は自然淘汰されることになる。だからこそ、ネームバリューがある大企業はともかくとして、世間にあまり知れ渡ることのない中小企業こそ、応募者が自社に来たい!と思ってくれるような独自色や、働きがいを訴求していかねばならないのである。この大前提として「働き方改革」は重要なファクターを持つことになると考える。
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