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日本柔道復活にみるマネジャーの重要性

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井上監督による真の「マネジメント」実践

 ではこれらを踏まえて、井上監督が実践したとされる取り組み(特徴)をマネジャーの本質に重ねて次に列挙してみよう。
 第一は、組織の見直しを図ったことだ。なかでも主に重量別による担当コーチ制を復活させたことが語られている。
 第二は、選手が試合ごとの課題を設定し、これに対して指導陣営が返答するアスリートファイルと呼ばれる課題克服シートを導入して双方の信頼関係を築いたと言われている。
 以上2点からは、マネジャーの重要な役割であるコミュニケーションを図ることに繋がる。コミュニケーションは組織のあり方を決定する。共通言語の確立・共有によって、より良い結果を創出するための環境づくりに寄与したと言えるのではないか。
 第三は、柔道の専門家だけでなくスポーツ医学の専門家を招いたとされる点だ。例えば、筋力トレーニングを体系化し、日本人選手の弱みである海外選手との体力差を克服したと言われている。まさに「個々人の弱みを消し」たのである。
 第四は、練習量でなく質(内容)を重視し、柔道という枠組みに捉われず、選手達に他の格闘技を体験させて新たなヒントや強みを引き出したと言われる点だ。「各人が遂行する活動の能率化を図」り、「個々人の強みを最大化」することに貢献したと言ってよいだろう。
 第五は、最終目標は金メダル獲得というゴール設定にブレがなかったと言われる点だ。過剰な練習量による疲労蓄積や怪我回避のために、選手を敢えて休ませるという選択肢を与えたことは、「いま必要とされているものと、将来に必要とされるものを調和させ」た決定である。

おわりに

 これらの点から見えてくることは、まさしくオーケストラ指揮者として、井上監督がチーム全体の成果を考慮しながら正しいマネジメントの本質を貫いた賜物だと言えないだろうか。もちろん誤解のないように言っておくと、代表選手のたゆまない努力と、各指導陣の能力の高さがあったからこその結果だ。しかし、どんなに一流の選手、一流の指導陣を結集させたとしても、これらをまとめ上げる要のマネジャーが機能しなければ組織は成立せず良い結果(成果)を生み出すことはできない。組織をマネジメントするマネジャーの役割は、結果を左右するほどの重要なポジションにあることを改めて思い知らされる。翻って、誤ったマネジメントは組織や人を腐敗させる。井上監督のマネジメントは、私たち一般企業においてもヒントになるわかりやすい好事例ではないか。人や組織を活かすも殺すもマネジャーの手腕にかかっている。


SRC・総合労務センター 株式会社エンブレス 特定社会保険労務士 佐藤正欣】

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