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貴社の営業秘密(知財・技術)は安全ですか?

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日本の特許制度導入から130周年を迎えた今年、政府は企業の競争力の源泉ともいえる
知財をサイバー攻撃や産業スパイなどから守る施策を講じている。
近年、大手企業の技術が海外へ流出し問題となっており、経済産業省の調査(国内約3千社)
によると、約14%で営業秘密が漏えいした可能性がある、と回答。
流出については70%以上が「想定外であった」とのデータが発表されたこともある。

「営業秘密」は3つの管理方法で流出を防ぐ

大手企業に限らず、中小企業においても、重要なノウハウの漏えいや退職者による
顧客名簿の流出等により、多大な損失を被る事例が発生している。しかしながら、
これらを防止する対策は進んでいないのではないだろうか。

 企業は「事業活動に有用な技術上または営業上の情報であり、公然と知られていないもの」
について、「営業秘密」として次の管理を行い、流出を防ぐ必要がある。
(1) 秘密表示、施錠等による「物理的管理」
(2) パスワード、ICカード、ウイルス対策等による「技術的管理」
(3) 規程整備、周知等による「人的管理」

「人的管理」面での4つの対策

今回は、「物理的管理」や「技術的管理」に比べて軽視されがちな「人的管理」面での
対策について、注意すべき点を挙げてみたい。

1.管理規程、取り扱いマニュアルの作成・改定
 他社の規定の丸写しや外部機関への丸投げではなく、自社に合った管理規程やマニュアルを
作成することが肝要である。業務に携わる社員からも意見を集め、作成していきたい。
また、随時改定を加えて実効性を上げておこう。

2.定期的な研修の実施
 管理規程、マニュアルについては、入社時はもちろん、定期的に具体例を挙げて研修を
実施する。研修においては、退職後の義務や懲戒事由、退職金の取り扱いや刑事告訴の
可能性等についても充分に周知しておきたい。
 また、管理職の者や機密情報を取り扱う者を講師に任命することも有効である。
他の社員を指導することにより、自らの背任的な行為に抑止が働くことも
期待できるであろう。

3.事例の共有
 大事には至らなかったが危険と考えられる「ヒヤリ・ハット事例」、軽微ではあっても
取り扱いを誤った「ミス事例」は、発生後直ちに朝礼等で共有することが重要である。
これらを隠すのではなく、積極的にオープンにし、防止対策を講じる風土が大きな漏えい
事故を防ぐことになるのである。
 これを実践するためには、ミスを過剰にマイナス評価する考え方を排除しなければならない。
経営者や管理職の意識改革、人事考課の見直し等が必要となる場合もあるだろう。

4.退職者への対応
(1)退職までの意識づけ
 社員の退職時においては、営業秘密の流出が具体的なリスクとして顕在化する。退職を申し
出てきた時点では、すでに情報流出やその準備が行われていることも多く、退職を決意する
までの意識づけがポイントとなる。
(2)誓約書の提出
 退職時には、秘密保持に関する誓約書を提出させる。誓約書には、当該退職者が関わった
業務に応じて、保持すべき秘密を具体的に記載することが望ましい。
 また、提出の根拠をあらかじめ就業規則に定めておくことが必要となる。
(3)競業避止義務の設定
 重要な営業秘密に触れる者については、退職後一定の期間競合他社への就職等を禁じる
「競業避止義務」を課しておきたい。競業避止義務は、憲法で保障されている
「職業選択の自由」との関係から、対象となる期間や範囲、代替措置等の条件を慎重に
検討しなければならない。これについては、専門家の助言を受けておくことが望ましい。


営業秘密の流出は、企業の存続を脅かす重大な事案であり、発生すれば取り返しのつかない
ものになる。今回は「人的管理」を取り上げたが、「物理的管理」や「技術的管理」も
重要であることは言うまでもない。経済産業省から、これら営業秘密の管理について、
参考となる資料が発行されている。チェックシートもあるので、自社の現状を確認して
みるのも良いであろう。これを機に実効的な対策を講じていただきたいと思う。

【山本社会保険労務士事務所 山本武志】

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 経営プロ編集部

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経営者・事業部門責任者から部長・課長・リーダー層まで、経営の根幹を支える人たちの成長を支援するパートナーメディアを目指します。日々の業務に役立つニュースや小ネタ、組織強化や経営理論まで幅広く学べる記事を提供します。

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