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「かとく」と「過重労働特別監督管理官」が始動する!

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 先日、政府が長時間労働への歯止めをかけるべく、企業への行政指導を強化する旨の報道が発表された。その基準は、1か月の残業時間数が80時間以上(従来は100時間以上)発生している企業とされる。中心組織として機能するのが“かとく”だ。長時間労働が恒常化している企業は早急な対策が必要である。そこで今回は長時間労働がもたらす弊害について考えてみたい。

過重労働撲滅特別対策班とは何か?

 過重労働撲滅特別対策班…通称「かとく」と呼ばれる。これは、昨年4月に厚生労働省によって東京労働局と大阪労働局に新設された今まで存在しなかった組織だ。長時間労働等の悪質な労働基準法違反を働く、いわゆるブラック企業を摘発・排除するための行政の専門集団である。伊丹十三監督作品の「マルサの女」をご存知の方は、この労働版と捉えればイメージしやすいかもしれない。悪質事案に対して強力な権限(逮捕権限)を持たされた組織である。そして冒頭で触れたとおり、今般新たに強化基準を引き上げるとともに、厚生労働省内に「かとく」を設け、ここを中心として、全国47の都道府県労働局に「過重労働特別監督管理官」が新設・配置されたのである。この流れから、管轄労働基準監督署による企業への立ち入り検査はこれまでよりも増えるとみてよいだろう。

導入背景にあるものは…!?

 この対策は、先に開かれた一億総活躍国民会議で検討された長時間労働抑制対策の具体的表れである。少子高齢社会にある我が国にとって、高齢者に働きやすい環境を整備すること、また妊娠を望む女性や子育て中の女性労働者にとって、長時間労働は就労阻害を引き起こすことを受けての対策措置である。
 そして、厚生労働省による長時間労働が疑われる8,530事業所に対して実施した監督指導の実施結果によれば、半数を超える4,790事業所で違法な時間外労働が行われていることが確認された。このうち約6割の事業所で月100時間を超える時間外労働が行われていた事実が判明(平成28年4月1日付 厚生労働省「平成27年4月から12月までに実施した監督指導結果」)したことも大きい。
 加えて、月80時間を超える時間外労働は、脳・心臓疾患といった過労死、精神障害等の問題が生じる入口であることは、かねてから指摘されているところであるが、最近の労災補償状況をみると、脳・心臓疾患に係る労災請求件数は、3年連続で減少傾向にあるものの、精神障害関係の請求件数は過去最多を記録(平成27年6月25日付 厚生労働省「平成26年度 過労死等の労災補償状況」より)する状況にあることも影響していると考えられる。

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