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経営者が目標を語ることの重要性

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 年が明けて2016年が始まった。経営者の皆さんは仕事に社員に向けて今年の目標(到達点)を語っただろうか?年明け最初の朝礼や会社の期首において社員個々人に目標を立てさせる会社は多い。だが、会社の中で最も目標を語らなければならないのは経営者、すなわち社長だと筆者は考える。至極当たり前であるが、その理由は陣頭指揮を執る会社のトップであるからに他ならない。そこで今回は、経営者が目標を語ることの重要性について考えてみたい。

 まず、社長が社員に対し定期的に経営計画や目標を語っている会社は、経営環境が厳しい現代でも着実な成長を遂げている(これとセットで人材育成も重要な位置付けにあるが、本稿では紙幅の観点から割愛したい)というのが筆者の実感だ。これは成長する会社でみられる共通項である。なぜだろう?と考えてみると、やはり社員達にとって、トップの言葉はそれだけ重いということの表れなのだと思う。トップが何を考えてどこに向かおうとしているのかを明確に示すことで社員達もついて行きやすい。このような話をすると「いやいや、俺だって社員に向けて発している!でも効果がない。」という社長に出会うことがある。そこで、どのような内容を話しているか聞いてみると、どこかで聞いたような通り一辺倒の年頭所感的な言葉であったりするのだ。大企業の経営者はさておき、社長が経営計画や目標を語ることは意外と少ない。このような中で、せっかく社員に向けて言葉を発しているのに、どこかで聞いたような形式的なメッセージとなってしまうことはすごく勿体ない。
 では、同じように社員に向けて語るにも関わらず、社員の士気が上がり、社の発展に繋がるケースと、そうでないケースでは何が異なるのかを考えてみたい。それは大きく次の5つである。

 第1に、社長自身の言葉で社員に語りかけられているかどうかである。社の目標・到達点を語ると聞くと、仰々しく感じ構えてしまうかもしれないが、格好良くスマートに話さなければいけない訳ではない。むしろ逆である。社長が普段から使用する言葉で会社への思い・未来像、これに対応する目標・到達点を語ることこそが社員一人ひとりに伝わるのである。
 第2は、目標・到達点は口頭に終始せず、紙に書き出し職場で常に社員の目に入るところに掲げられていることだ。社長も社員も人間である以上、言葉だけでは、どんなに素晴らしい内容であっても、日々の業務の忙しさに埋没し忘却することは否めない。紙に貼り出し視覚化すれば、常に意識し社員の動機づけにもなる。
 第3は、単に紙で貼り出すだけでなく、社長と社員がお互いに定期的な「振り返り」を行っている点である。どの部分が達成間近で、どの部分が未達成なのか。あと少しで達成できるものは何が足りていないのか等々、PDCAのサイクルを確実に実行している。
 第4は、目標・到達とする内容が具体的である点だ。よく見受けられるのは、目標売上高と粗利益だけが書かれた味気ないものである。目標数値のみの記載は、“社員任せの単なるノルマ”と捉えられても仕方がない。数字だけでなく、これを達成するための具体的行動も一緒に備わっている目標は行動へと移しやすい。例えば、”今期もお客様からたくさん感謝されよう”というような漠然とした内容ではなく、“○○という行動を追加し、▲▲という我が社のサービスを昨年よりも□□まで充実させることで、お客様から感謝をもらえるようにしよう”というような明確な設定である。
 第5は、第4で紹介した目標の到達点が、現状よりも少し上、あと1・2歩で達成可能な絶妙なラインに設定されていることだ。すなわち、全社が一丸となって取り組み、それなりの努力をしなければ達成できない目標ということである。どんなに素晴らしい目標でも、実態とかけ離れた目標は絵に描いた餅と化して意味がない。現状より少し上の目標ラインとすることは、努力して取り組めばクリアできるという達成感と自信を社員に与えることができる。これが全社的に共有できれば、組織として大きな力となる。

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