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管理部門の自動化・システム化と企業の危機管理策

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 企業経営には常にリスクがつきまとう。だから「リスク(risk・危険) 管理」は非常に重要だと広く認識されている。そして「リスク管理」は「リスクを知ることから始まる」というフレーズを一度は聞いたことがあるだろう。そのリスクを予め見積り、未然に回避できるよう対策をとっておくことは大切なことだ。ただ一口にリスクと言っても様々なリスクが存在するので、今回は管理部門の作業組織に絞って自動化・システム化に伴う企業の危機管理を考えてみたい。

 まず自動化・システム化の歴史を振り返ると、製造業では1980年代にME(microelectronics)化が一気に進んだ。これにより人間が行ってきた作業が機械にとって代わり自動化され、作業の合理化・効率化、生産拡大に寄与した。また同じ頃、ホワイトカラー層が担う現場ではオフィスコンピュータをはじめとしたOA(office automation)化が普及し始め、業務の自動化や、事務処理過程の一部分を人間に代わってコンピュータが担うようになった。1990年代にはIT(information technology)化の波が起こり、ME機器類とデジタル情報の融合で一段と技術革新に拍車がかかる。このIT化の波は、様々な場でシステム化やネットワーク化が図られ、業種を問わず広く入り込んでいった。

 さて、新しい技術の台頭により、存在していた仕事がなくなることもあるし、残ったとしてもこれまでと仕事の仕方がガラリと変わることがある。まさに2015年の今もロボット技術やAI(人口知能)の発達で「○年後になくなってしまう仕事・職業」が紹介され世間を賑わせている。
 企業からすれば、人間と違い機械やシステムなら24時間連続で稼働させても問題ない。ある事象に対し、人間がやるよりも素早く正確に処理されれば、それは合理化できている証であり、作業効率向上を意味する。企業は常に効率化を志向し利潤を追求する訳だから、企業活動という面では当然の帰結と言えよう。
 しかし、作業組織の改善や業務の高速化へと偏りすぎるあまり、労働者の能力開発が疎かになってしまう危険性があることを企業は常に意識しておかねばならない。新技術は、人員削減をはじめ、作業の効率化・高速化で便利になる一方、ある部分では労働者の持つ能力を低下させているのではないかと思うからだ。つまるところ、組織の弱体化にも繋がると言えるだろう。具体例として、従来は制度内容や背景、事務作業手順を理解していなければ完結し得なかった仕事も、システム等で決められた箇所へ値を入力したり、操作したりすれば詳細がわからなくても事務処理が行えてしまうことが挙げられる。深く理解していなくても、システム操作の方法さえ覚えてもらえば即戦力化できるメリットがある。だが、一連の流れを理解していないため、応用が効かず作業の誤りに気づけない、判断できない危険性がある。


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