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事業価値の向上を阻むのは「組織の壁」

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■価値が顧客に届けられるまで

 事業は最終顧客へ届ける価値の連鎖であり、あらかじめ設計した業務機能でそれぞれの価値を繋げていく。「当初想定していた価値が最終顧客まで正しく伝わっているのか?劣化していないか?」という懸念は、介在する人・部門・企業が多いほど、また時間がかかるほど大きなものとなる。この価値提供プロセスでは、どうも業務機能の固まりや組織・会社を超えると連携が難しいようだ。プロセスが複雑であったり、強化されていたりするほど、業務機能単位による個別最適が全体最適より優位になってしまう。誰かが最後まで全体の整合性を見ていてくれたら良いのだが・・・そうもいかないのがよくあることだ。

■どこまで把握している? なぜ把握が難しい?

 業務処理は何らかの成果物をアウトプットするが、次工程のインプットとしての基準を満たせば、そこで業務は一旦途切れる。気にかけるのは自分の前と次の工程だけで、それ以外はたちまち把握しなくなる (できなくなる)。そして、総じて人は自分の分担や責任範囲を狭める傾向にあるので、他を理解しようとする動機も薄くなる。

 このように事業プロセス(価値連鎖)の全体像を掴むことの難しさは業務機能・役割などの根幹的なところに課題があるようだ。そもそも業務の職責・ミッションや業績評価の対象として求められていないのである。事業全体を把握しようとすると、職責や業績評価の基準レベルを見直さないと解決しない。

■事業価値が高いということの意味

 事業価値を高めることとは、最終顧客の満足度(かつ事業収益性)を高めることである。ここでは最終的な結果が全てである。途中のプロセスで付加価値が無くても良いし、逆に大きな価値が生まれたとしても最後にどうなったかが大事である。多くの企業で業務機能別の組織が採用されているが、事業の全体最適を目指すとなると、その職責設定や業績評価との間にはズレが生じてしまう。

 たとえば、生産と販売の各部門では、その業績評価は全体最適とは言えないケースが多い。生産部門は稼働率など生産性・効率を重視するし、販売部門は効率面より売上や欠品、リードタイムを気にする。いずれも最終価値に影響するが、トレードオフの関係にもなりうるし、顧客の利益に結びつかない場合もある。稼働率・生産効率と欠品防止という志向が重なり合った結果、過剰在庫が生まれたりする。評価指標そのものが、最終的な顧客価値と分断されてしまって、個別部門に特化した視点で設定されていることが課題だ。いずれにしても分断を阻止する発想が必要なのだ。

■経営者が目指すゴールとミッション

 事業および経営者のゴールは、最終顧客への提供価値を高めることである。ただ、ほとんどの事業では多くの業務を連携させて最終顧客へ価値を届けるため、部門毎の職責設定や業績評価が障害になることがある。

 ある業務がその工程では価値を生まない(マイナスになる)ものであっても、最終的な顧客価値に貢献するなら意味があるはずだが、部門単位の評価基準ではそんな視点で設定されていない。業績評価を業務機能単一なものとせず、より全体最適視点で設計する思想を持ちたい。たとえば、前後工程を合わせたり、階層を持たせたりして、最終顧客の価値へできるだけ近づけて、その貢献度を評価する。部門だけのパフォーマンスに囚われないこと、最終価値を見据えることが重要である。

 「組織の壁」という言葉があるが、つまりは「部門別評価制度が全体最適化されていない」ということではないだろうか。これが変わらないと顧客最適視点の事業は創れない。いうまでもなく、顧客価値最大化という全体最適が部門の個別最適より優位となるはずで、事業全体に責任を持つ経営者が評価し、統制し、主導するミッションを持つ。


【事業価値向上パートナー・柴田隆博】

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経営者・事業部門責任者から部長・課長・リーダー層まで、経営の根幹を支える人たちの成長を支援するパートナーメディアを目指します。日々の業務に役立つニュースや小ネタ、組織強化や経営理論まで幅広く学べる記事を提供します。

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