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拡大する学童保育市場の新たなビジネスモデル

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フルタイムの共働き世帯が直面する「小1の壁」

フルタイムの共働き世帯が直面する「小1の壁」

 「小1の壁」という言葉をご存知だろうか。子どもが保育園から小学校に上がる際、共働き世帯が直面する社会的な問題を表す言葉だ。 子どもを持たない人や、妻が専業主婦の管理職の男性は、「子どもが小学校に入れば子育てもラクになり、仕事に専念できるだろう」と思いがちだ。ところが、現実はそうではない。保育園は延長保育があるところも多く、都心では21時、22時まで子どもを預かってくれるところもある。ところが小学校1年生になると、学校は15時前後に終わってしまい、例え親の仕事が17時に終わっても、3時間あまり、子どもが一人になる時間が発生してしまう。

 共働き世帯の子どもは「学童保育(放課後児童クラブ)」と呼ばれる、親に代わって放課後の面倒をみてくれる施設がある。しかし、学童保育には100%入れるとは限らない。学童保育連絡協議会の調査によると、今年5月1日時点で学童保育の利用者は101万7429人と、平成18年の調査以来、初めて100万人を超えた。一方、学童保育に申し込んだのに入れなかった待機児童は、調査を始めた2003年以降で最多の1万5533人だった。待機児童は特に東京都(2870人)や兵庫県(1297人)が多く、実際には学童保育に入れず離職した人を含めると、3~4万の待機児童がいると言われている。政府は昨年、学童保育の受け皿を2019年度末までに30万人に拡大することを決定した。

 そして2015 年4 月、学童保育は制度的に大きな変化を迎えた。対象年齢が現在の「おおむね10 歳未満」から「小学生」に拡大されることになったのだ。学童保育において6 年生までの受け入れを義務化したものではないのだが、高学年の子どもにとっても魅力的な場所になるよう、学童保育の内容を見直すきっかけとなっている。共働きが増える中、親からのニーズが高く、より充実した内容を求められているのが学童保育だが、保育内容や運営形態、指導員の雇用など、様々な面で問題を抱えている。

【現状の学童保育が抱えている主な問題点】
・閉館が18時前後と保育園より早い
・土曜日や夏休みは閉所されるか、運営されていても昼食が出ず、お弁当を持たせる必要がある
・施設が不十分(広さ、設備、環境)
・指導員の数が不足している、労働条件が悪い

 こうした様々な問題は、ビジネスの視点でとらえれば、新市場創出の対象となる。学童保育に対しては、自治体からの補助金が支給されているが、それだけでは経営が成り立たないため、利用者から料金(保育料)を徴収するのが一般的で、公立やNPOが運営する施設では、月額で5千~2万円が平均的な水準だ。それに対して、民間企業が運営する施設は、利用料は公立に比べて高いが(3万~6万円)、その代わりにハイレベルなサービスで差別化を図っている。

ハイグレードな学童保育サービスを提供する「キッズベースキャンプ」と「小田急こどもみらいクラブ」

 東急グループが、東京都内と神奈川県など52ヶ所で展開する「キッズベースキャンプ」という学童保育は、小学校から、施設までの送迎バスを運行することで子どもの安全に配慮している。また、キッズコーチと呼ばれるスタッフが、一人につき子ども10人以内の配置で、友達作りに重点を置いた日常のプログラム、スポーツ大会、アウトドア体験などのイベントを行うほか、サマーキャンプ、北海道ツアー、高尾山登山なども実施している。また、親が仕事の残業で遅くなる時には最長22時まで預かってくれるうえ、夕食の提供も行っている。最寄り駅にキッズベースキャンプがない場合は、出店リクエストをすることもできる。同社のホームページでは、保育園にいる時から2年かけて出店にこぎつけた母親の事例が掲載されている。
 
 「キッズベースキャンプ」が主に東急沿線を中心に展開しているのに対して、「小田急こどもみらいクラブ」は 梅ヶ丘、経堂、千歳船橋、喜多見の小田急沿線4ヵ所で展開する学童保育だ。その特徴はSAPIX・代ゼミグループの株式会社日本入試センターと提携し、SAPIXのノウハウを活かした通信教育「ピグマキッズくらぶ」の教材提供も受けて、充実した学習サポートを提供していることだ。スタッフは提携先から学習指導スキル面での研修も受けており、子どもたちは彼らの指導のもと、学校の宿題やSAPIXの通信教育教材に取り組む。「勉強はすべて学童で済ませておいてほしい」という共働き世帯のニーズを重視してのことだ。学童保育に学習面を委託できれば、帰宅後は親子の楽しい時間だけを共有でき、教育熱心な親もストレスから解放される。
  
 学童保育はある程度トレーニングされた人を配置する必要があり、高収益が見込めるビジネスモデルではないと言われているが、鉄道会社にとっては沿線の各駅に設置することで住宅地のステータスが上がるというメリットがある。また、学習塾にとっては、学童保育時にSAPIXのファンを育成し、中学受験の準備を始める高学年の生徒を増やす効果も見込まれる。


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