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朝型勤務は残業時間削減の鍵となるか? 朝型勤務のすすめ

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厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、フルタイムで働く正社員の残業時間は2010年以降増加傾向にあり、2014年の残業時間は年173時間と1993年以来最長となっているということである。
また、中小企業について猶予されている、月60時間超の時間外労働の割増率50%の適用が2019年4月より実施されることが明らかになり、企業においては今後の労働時間管理のあり方について見直しが急務である。

注目が集まる始業前の「朝方勤務」

 そんな中、夜の一定の時刻以降に残業することを禁止し、始業前の朝の時間を有効活用する「朝型勤務」が注目を集めている。政府も、働き過ぎ防止策の一環として「朝型勤務」を推奨している。
 他の国の勤務スタイル事情を見てみると、「8時より前」に仕事を始める人の割合は、日本では7%であるのに対し、ドイツでは46.7%、5 割近い労働者が「朝型勤務」をしている。また、「17時より前」に仕事を終える人の割合は、日本3.7%に対し、ドイツでは51.1%である。(出所:武石 惠美子、「働く人のワーク・ライフ・バランスを実現するための企業・職場の課題」、経済産業研究所)

 また、就業1時間当たりでみた日本の労働生産性は、40.1ドル(4,250円)、OECD加盟34カ国の中では第20位であるのに対し、ドイツは9位で、58.3ドル(6,180円)であることから、生産性を上げる為にも「朝型勤務」は有効だといえる。(出所:公益財団法人日本生産性本部、「日本の生産性の動向2013年版」)

 「朝型勤務」賛成の意見としては、「始業前の時間は電話の問い合わせもなく、仕事に集中できる」「夜残業は終わりがなくダラダラ仕事しがちであるが、朝は時間に限りがあり、業務効率が良くなる。」「朝は頭がスッキリしており、夜疲れた中で仕事をするよりも、短い時間で処理できる」等があげられている。
「朝型勤務」を奨励している企業においては、朝食を出したり、早朝勤務の割増手当を上げたりする事例も出てきている。しかし、「朝型勤務」は良い事ばかりであろうか。「朝方勤務」を実施するにあたり、企業として注意する点はないのであろうか。

「朝方勤務」は業務上の必要性を確認することが重要

 労働時間の適正管理と無原則な時間外労働の防止を目的として、事前に所属長の承認を得て時間外労働を行う、という事前承認制を採用している企業も多いかと思う。「朝型勤務」は時間が限られているので、仕事の内容と、それにかかる時間の予測がしやすく、事前承認制がとりやすいといえる。
事前承認制を採用せず、自発的な朝型勤務を放置していると、時間外の未払い等の問題につながる可能性はでてくる。
 実際、1時間の自発的な早出出勤に対し未払い残業代を請求した事例として八重椿本舗事件(東京地裁 平成25年12月25日判決)がある。
その判例によると、「労働基準法上の労働時間に該当するか否かは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであり、使用者の指揮命令下にあるか否かについては、労働者が使用者の明示又は黙示の指示によりその業務に従事しているといえるかどうかによって判断されるべきである」とした上で、「終業時刻後のいわゆる居残残業と異なり、始業時刻前の出社(早出出勤)については、通勤時の交通事情等から遅刻しないように早めに出社する場合や、生活パターン等から早く起床し、自宅ではやることがないために早く出社する場合などの労働者側の事情により、特に業務上の必要性がないにもかかわらず早出出勤することも一般的にまま見られるところであることから、早出出勤については、業務上の必要性があったのかについて具体的に検討されるべきである」とされている。本件では、始業時刻より早く出社する業務上の必要性が具体的に主張立証されなかったので、労働時間制は否定された。
 自発的な「朝型勤務」の場合、タイムカード等により始業時刻より相当前の時間が記録されていることも多く、労働者がこれを客観的証拠として時間外労働の未払い賃金として請求することも少なくない。メリットの多い「朝型勤務」であるが、会社としては、業務上の理由のない「朝型勤務」が労働時間と認められるリスクを想定し、始業時刻前に業務を行う場合は、所属長の事前承認を徹底し、「朝型勤務」を活用し、残業時間削減につなげていって頂きたいと思う。

【松田社労士事務所 特定社会保険労務士 松田 法子】

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