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商機拡大に活かせるか?――TPP早わかり

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 難航していた環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉についに終止符が打たれた。10月5日、アメリカジョージア州アトランタで行われたTPP閣僚会合で交渉参加12カ国が大筋合意。安倍首相が「国家百年の計」と呼ぶように、今後の日本経済を大きく変える巨大な自由貿易ブロックの誕生が見えてきた。

 環太平洋経済連携協定(TPP=Trans-Pacific Partnership)は、太平洋を取り囲む国々の間でモノやサービス、投資などができるだけ自由に行き来できるよう、各国の貿易や投資の自由化やルール作りを進めるための枠組みだ。交渉は2010年3月にアメリカやオーストラリアなど8カ国で始まり、日本は2013年7月から正式に交渉参加。カナダ、メキシコ、ペルー、チリ、ベトナム、マレーシア、シンガポール、ブルネイ、ニュージーランドと、12の国が参加している。協定の発効には6カ国以上が批准した上で、そのGDPの合計が域内の85%以上を占めるなどの条件があり、来年以降の発効となる見通しだが、GDPで世界の約3割を占める世界最大規模の経済圏が生まれるインパクトは計り知れない。

 TPPの特徴は、モノ(関税)だけではなく、特許や著作権といった知的財産の保護に向けたルール作りや、金融、通信などサービス分野の自由化と、交渉の対象分野が幅広いこと。少子高齢化で国内市場が縮小していく日本にとって、最大のメリットは、今後、アジア太平洋地域の経済成長を取り込める道筋がついたことだ。具体的には、関税の撤廃や貿易手続きの簡素化で、海外から多くの商品を安く購入できるようになり、日本の工業製品や農林水産物を輸出しやすくなる。また、ビジネスパーソンの入国・滞在手続きが迅速化・簡素化され、投資ルールが整備されることで、国内市場にとどまっていた中小企業や流通などのサービス産業も海外進出しやすくなると期待されている。知的財産保護のルールが整備されることは、アニメやゲームなどのコンテンツビジネスにとって朗報だ。

 一方、日本のデメリットとしては、海外から安い農産物が輸入され、国内の農業が打撃を受けるという指摘が多い。日本経済新聞の報道によれば、そうした声に対して、政府ではアメリカとオーストラリアからの新規輸入分と同量の米を農家から買い上げて国産米の価格下落を防ぐこと、牛・豚肉の赤字補填などの対策作りに着手している。

 また、日本の公的医療保険制度や薬価制度がTPPで変更を強いられ、医療の安心が脅かされるのではないかという不安の声も大きいが、政府は、公的医療保険制度のあり方そのものなどはTPPの議論の対象になっていないし、TPPはアメリカが日本やほかの国に自国の医療保険制度の民営化を強いるものではないと説明している。医薬品については、新薬発売から後発医薬品が承認されるまでの期間を左右する、新薬開発企業のデータ保護期間が焦点のひとつになっていたが、日本の保護期間は8年で、今回のTPP交渉の着地点と同じだ。保護期間が長くなれば後発医薬品の発売が遅れると心配されたが、国内での大きな影響はなさそうだ。

 TPP交渉の大筋合意を受け、日本企業は商機拡大へと意欲的に動き始めている。海外企業が日本市場に進出しやすくなることで、今後、伸びそうなのが東京のオフィス・住宅需要。訪日外国人の増加も見込まれる。国外では、中小企業のベトナムへの進出意欲が高まると予想されている。TPP交渉の範囲は幅広いだけに、影響が及ぶ業界も多岐にわたる。環境変化を見据えて自社のビジネスをどうテコ入れできるか、経営者の手腕が問われそうだ。

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経営者・事業部門責任者から部長・課長・リーダー層まで、経営の根幹を支える人たちの成長を支援するパートナーメディアを目指します。日々の業務に役立つニュースや小ネタ、組織強化や経営理論まで幅広く学べる記事を提供します。

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