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アメリカ企業で活躍する文化人類学者たち ~顧客のニーズを掘り起こす「センス・メイキング」で商品を開発~

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フィールド・ワークで販促戦略を転換した大手ビールメーカー

 その中の一つに欧州屈指のビール会社ビアゴ(仮名)の事例がある。ビアゴは販売店では売上が上向きの定番ラガー・ビアーがなぜかバーやパグでは売上が減少しているという問題を抱えていた。従来型の市場調査をやり尽くしても原因がわからなかったため、社会人類学者のグループにイギリスとフィンランドの10数ヵ所のバーで実施調査をするよう依頼した。学者たちは一切の仮説を立てず、純粋にバーのオーナーやスタッフ、常連客を観察し、150時間に及ぶ動画、数千枚の写真、数百ページの観察記録を持ち帰った。それらのデータをビール会社のマネジャーとともに分析した結果、いくつかの事実が判明した。

 バーのオーナーから重宝がられていると思った自社の販促グッズは、実際にはあまり使われていなかった。それどころか、店によってはガラクタ扱いされて戸棚に押し込まれていたり、嘲笑の対象になってさえいたのだ。また、ウェイトレスたちは生活のために追い詰められた気持ちで働いており、商品について何も知らず、知ろうともしなかった。この発見によってビアゴは戦略を転換した。バーやそのオーナーのタイプに合わせてグッズをカスタマイズし始めた。また、自社の販売員にはバーのオーナーたちをよりよく知るための研修を行い、オーナーたちが販促キャンペーンをするときに役立つグッズを考案。さらに、ウェイターやウェイトレスには彼らの職場で「教室」を開催してブランドについて教え込み、深夜まで働く場合にはタクシー・サービスを提供して味方につけた。こうした戦略が功を奏し、バーやパブでの売上は回復し、ラガー・ビールの販売量も市場シェアも成長を続けているという。

未知の市場開拓に役立つ文化人類学の知見

 日本の経営者やビジネスパーソンの多くは、文化人類学をビジネスには役に立たない、浮世離れした学問と見做してはいないだろうか。だが、それでは欧米の先進企業に差を付けられるばかりだ。我々はアジアのみならず、中近東やアフリカなど、言語、文化、歴史、宗教、生活習慣が大きく異なる未知の市場を開拓する必要に迫られているのだ。現地の人々が本当に必要とする商品やサービスは、日本人が勝手に便利だ、上質だと思い込んでいるものとは異なる可能性が高い。グローバル展開を考えておられる経営者は、いまこそ文化人類学者の起用や「センス・メイキング」の手法を検討されてはいかがだろう。


【経営プロ編集部 ライター:島崎由貴子】

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