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フォルクスワーゲン排ガス不正操作とコンプライアンス

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一歩進んだ環境対応のものづくりで世界をリードしてきたはずのドイツ。その代表的な自動車メーカー、フォルクスワーゲン(VW)が、排ガス規制を逃れるため、ディーゼル車に違法なソフトウェアを搭載していたことが発覚し、世界各国を巻き込む騒動になっている。

9月18日、米環境保護局(EPA)がVWの排ガス試験での不正を公表したことを受けて、アメリカ、ドイツがVWに対する詳細な再検査に乗り出しているほか、フランスやイギリスがEU域内での検査を実施するよう要請。VWは問題のディーゼル車両のリコールを検討しており、対象は世界で1100万台に上るという。

各国で行われている排ガス試験は、屋内で車体を固定して加速や減速を繰り返し、排ガスに含まれる有害物質の量を調べるというもの。VWは、試験走行ではハンドルが固定されることを利用して、ハンドルが動かないときだけ排ガス浄化装置をフル稼働させる違法なプログラムを車載ソフトウェアに組み込んでいた。通常走行時は排ガス浄化装置が十分働かないようにして、走行性を高めていたようだ。排出される有害物質の量は試験時の数値を大幅に上回っていた。

VWではマーティン・ウインターコーン最高経営責任者(CEO)が9月23日、不正の責任を取って辞任することを表明したが、米司法省は刑事訴追を視野に捜査を始めているという。今後は、経営陣が不正を把握・関与していたのか、また、不正を防止できなかったコンプライアンス体制に不備はなかったのかが焦点となりそうだ。

VWは近年、経営戦略として販売台数世界一を目標に掲げ、トヨタと熾烈な競争を繰り広げていた。推測するに、世界一達成に向けた現場へのプレッシャーは相当強かったのではないだろうか。もしそうだとすると、東芝の経営トップが売上目標必達へのプレッシャーを現場に与え、不正会計問題につながったのと同じ構図があったことになる。

日産自動車のカルロス・ゴーン社長兼最高経営責任者(CEO)は、この問題について、会社の内部でそのような不正が行われていた場合、大勢の人が知っていた可能性が高いとロイターの取材に対して語っている。不正が行われていることを社員が知っても、声をあげにくい土壌があったのかもしれないし、声をあげても上司や幹部が握りつぶした可能性もあるだろう。

コンプライアンス体制の整備が日本よりずっと進んでいるといわれるVWのような欧米大手企業でも、こういう不正が起きてしまうのだ。どれだけ厳しいコーポレートガバナンス・コードがあってもチェックは難しいのだろうか。日本企業のコンプライアンス担当者は「どうすればいいのか」と頭を抱えたくなるだろう。

ちなみに、この問題が発覚する直前の8月、VWとの提携解消を発表していたのがスズキ。2009年にVWと資本・業務提携で合意した後、関係がこじれ、提携解消を求めて国際仲裁裁判所に訴えていたが、その結果、提携の解除が認められたものだ。当初、スズキがVWと提携した狙いはVWが持つ環境技術だったが、VWの環境技術の開示は十分ではなかったという。スズキの鈴木修会長はVWとの提携解消について、「満足している」と会見で話したが、ひょっとしてVWの今回の不正、あるいは不正が起きる土壌を見通していたのだとしたらお見事だ。

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