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残業問題における上司と部下の仁義なき戦い

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上司「もう終業時刻を過ぎているよ。今日はもう上がろう。」
部下「今日中に終わらせておきたいのです。残業させてください。」
上司「残業は許可できないよ。さあ、上がって。」
部下「どうしてですか。今日しておかないと明日が大変なのですよ。それにせっかく部下がやる気を出しているのに、上司がそれを邪魔するのですか!?」
上司「……」

長時間労働が原因となって労務管理トラブルに発展するケースは枚挙にいとまがないが、意外とその逆のパターン、つまり定時に上がらせようとして問題になるケースも多い。責任感や使命感から残って仕事を続けようとする部下を無理やり定時に帰宅させようとして、かえって士気の低下や不満の増加を招くというケースである。企業として、このような部下からの残業要請に対してどう向き合うべきであろうか。労使双方の視点から、残業がもたらすデメリットを考えることでそれを考えてみたい。

もしも「いくらでも残業OK」という職場があったらどうなるだろうか。従業員は残業が出来ることを前提に仕事をするようになる。そうなると無駄な時間という概念が無くなり、時間を湯水のように使うようになる。効率よく短時間で仕事を済ませる努力はしなくなり、いわゆるダラダラ残業が蔓延し、残業代でコストは上昇する。

その一方、長時間労働からくる疲労や集中力の低下でミスが増加、品質は低下、職場の士気も低下する。また、長時間労働が原因で従業員の健康が損なわれれば、企業の安全配慮義務違反も問われるだろう。そこに企業としての未来は無い。こうして考えると、企業として残業は“NO”と言わざるを得ないのである。

デメリットは残業を請求する従業員側にもある。例として、私自身の残念な体験を披露したい。会社員時代、私も多くの残業をした。その結果、基本給より残業代の方が多いような給与明細書を目にすることもしばしばあった。そしてこう思ったのである。
「こんなに貰えて、ラッキー!」

しかし、ラッキーなのは勘違いであった。本来味わうべき仕事の面白さよりも、残業代による収入増の方が嬉しくなってしまうと、仕事のやりがいを見失ってしまうのである。効率を高めて作業時間を短縮しない限り、新しい仕事にチャレンジする機会は永遠に巡ってこない。仕事内容は毎日同じことの繰り返しになる。
そうして私はだんだん仕事が詰まらなくなっていった。加えて、仕事の時間が増えれば増えるほどプライベートの時間は喪失し、遊びや恋(は、いずれにしても無かったかも知れないが)の時間は大幅に削られ、残業代による預金残高の上昇に反比例して、自分自身は人生において多くのものを喪失していった。

“残業”は労使双方の立場にとって共通の敵だと考えられる。従って、冒頭の例のように上司と部下の間で対立するというのは筋違いなのであり、問題の本質が見えていないからだということになる。残業問題とは労使間で対立するような問題ではなく、共に向き合い、将来に向かって解決すべき問題なのである。

 最後に、経営の神様、松下幸之助(パナソニック創業者)も著書(「道をひらく」PHP研究所)の中で次のように述べている。労使間で共有したい言葉であると思い、紹介させていただく。

『人より一時間、よけいに働くことは尊い。努力である。勤勉である。だが、今までよりも一時間少なく働いて、今まで以上の成果をあげることも、また尊い。そこに人間の働き方の進歩があるのではなかろうか。』


【出岡社会保険労務士事務所 出岡 健太郎】

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 経営プロ編集部

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経営者・事業部門責任者から部長・課長・リーダー層まで、経営の根幹を支える人たちの成長を支援するパートナーメディアを目指します。日々の業務に役立つニュースや小ネタ、組織強化や経営理論まで幅広く学べる記事を提供します。

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