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監督署ににらまれる? 労災保険の正しい活用法とは

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社員A「大変です!Bさんが荷物を運んでいて転倒しました。」
社長 「大丈夫か?Bさん!」
社員B「右足が……骨折したかもしれません。」
社長 「大変だ!すぐに病院へ行こう。」
(病院に到着)
社長 「Bさんが“家で”転んで……骨折しているかもしれませんので診てもらえますか?」
社員B「え?えぇ~!?」

労災事故は突然やってくる。普段慣れていないことだけに、きちんとした対応ができないことになりがちだ。例えば、誤って健康保険を使用してしまうことが挙げられる。病院などで、「労災のときには、保険証はつかえません。」などと書かれたポスターや張り紙を目にしたことはないだろうか。その通り、仕事中の傷病については、健康保険ではなく労災保険での治療になるのだが、これまで社労士として現場に関わってきて、会社が従業員に対して仕事中の事故によるケガでも健康保険で受診するように話をして、職場内でトラブルに発展するケースを実際に多く見てきた。

その背景には、労災保険についての正しい知識が不足していて、「労災保険は使ってはいけないもの」とか、「使ったら労働基準監督署に睨まれる」といった負のイメージや誤解があるようだ。しかし正しくは労災保険とは使うべきものであり、使ったからといって監督署に睨まれたりはしない。そこで以下、労災保険について2点ほどポイントを挙げて、そのイメージアップを試みたいと思う。

1.労働基準法上の災害補償義務のほとんどを担保する労災保険

労働基準法第75条をご存知だろうか。事業主が震え上がるような条文である。そこには次のように書かれている。
『労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の範囲を負担しなければならない。』

何にそんなに震え上がるのかというと、会社は何の責任がなくても、労働者が仕事でケガをしたり病気になったりしたら、その治療費を負担する義務があると定められているという点である。通常、賠償責任は責任がある人が負うものであるが、労働基準法は問答無用で会社に補償しろ、と言っているのである。そしてこの第75条の他にも、休業補償(76条)、障害補償(77条)、遺族補償(79条)、葬祭料(80条)、など、全て会社に義務付けられた災害補償となっている。

これらは会社にとって大変厳しいルールである。日々の事業活動において膨大なリスクを負うことになるし、資金力の低い会社ではとてもこのような災害補償責任を果たすことは不可能であろう。また、具体的に会社が災害補償をするとなると、お金の問題以外にも事務負担等様々な問題も生じてくる。想像しただけで暗い気持ちになってしまいそうだ。
しかし! そこで登場するのが「労災保険」である。なんと前述の会社の労働基準法上の災害補償義務の、ほとんどをこの労災保険がやってくれるのである。そう思えば、なんとあり難い制度ではないだろうか。正に労災保険は会社の強い味方なのである。

2.手続きはとっても簡単

労災保険の手続きというと、複雑でとても面倒くさいものだと思われているかもしれないが、実際はずっと簡単である。誤解を恐れず言わせてもらえれば、健康保険よりも簡単だ。窓口での健康保険証の提示も自己負担金も不要(病院によっては預り金等を取る所もある)だからだ。労災保険での受診は、基本的に次の2ステップで完了する。

①病院に仕事中のケガ(病気)だと伝える
②後から所定の書類を出す

このうちの最初のステップの「病院で仕事中のケガ(病気)だと伝える」をしないがために、事態をややこしくしてしまっているケースが多いように見受けられる。現場では、とにかく最初に労災であることを病院に伝えることを徹底したい。そうすれば、そのあとは意外と簡単である。

以上2点、労災保険イメージアップ作戦を試みてみた。労災保険は会社の強い味方であり、手続きも簡単であると少しでも感じていただけただろうか。「幽霊の正体見たり枯れ尾花」「案ずるより産むがやすし」、である。正しく理解して実際にやってみれば「なんだこんなものか」と思うだろう。

事業活動をしていれば、労災事故は避けては通れないものである。大切なのはその後の対応であり、そこできちんとした労災対応をすることは、労使間の信頼感をより強くすることにも繋がるはずである。ぜひ積極的に労災保険をご活用いただきたいと思う。

【出岡社会保険労務士事務所 出岡 健太郎】

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経営者・事業部門責任者から部長・課長・リーダー層まで、経営の根幹を支える人たちの成長を支援するパートナーメディアを目指します。日々の業務に役立つニュースや小ネタ、組織強化や経営理論まで幅広く学べる記事を提供します。

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