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働き方改革の成否の鍵は社長のリーダーシップ

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最近は働き方改革に関するプレスリリースを見るたびに、改めて「働き方改革って何なんだろう?」と思うことが多くなった。違和感と言い換えてもいい。いろいろな制度が百花繚乱。これだけ制度を大量生産して、果たしてみんながどれだけ幸せになれるのだろうか? 沸々と疑問が沸き上がる。制度というのは、一律に存在して価値を発揮するものではなく、一人ひとりにカスタマイズされてこそ活きるものだ。違和感はそのプロセスが履き違えられていることに起因しているように思う。

正直なところ、個々の生活者の働き方に国が茶々を入れるのもどうかと思うし、それよりも今必要なのは、会社が、自らの共同体の一員たる社員がプライベートな部分を含めて幸せな働き方をしているかどうか、しっかり認識することではないだろうか。残業はダメとか、働くママを応援しようとか、何がしかのスローガンを掲げるのではなく、会社が、働く社員個々にとって、どんな制度が適合するのかを真摯に考えるべきなのではないだろうか。

とすれば、働き方改革で大きなウエイトを占めるのは、経営トップの意識やリーダーシップをおいて他にない。経営者がどれだけ社員を尊敬できるか。ちゃんと見ているか。それが社員へ伝播することで、働き方改革の目的にもつながる“モチベーションの源泉”になるはずだ。

ここでトップリーダーのあり方を、具体例を取り上げながら考えてみよう。これは筆者のクライアントの例である。

【親の介護が必要な幹部社員Bさんの事例】
情報システム販売会社A社で、営業部長として働く50歳代のBさん。会社では部下20人を率い、営業の最前線のリーダーとして働いている。プライベートでは、自宅から100kmほど離れた町で、要介護3の認定を受けた85歳の母親が一人暮らしをしている。Bさんには実妹がいるが遠隔地に居住している上、妻も体調が悪いことから、母親の介護はBさん一人で行わざるを得ない状況。数年前にBさんが一切をとり仕切って、嫌がる母親を説得し、介護認定を受けさせた。手続上求められる認定調査員との面談や主治医の診断には、すべてBさんが対応した。結果として、母親は介護認定を受け、週4回のデイサービス(通所介護)、週3回の生活介護ヘルパーによる訪問介護、そして週6回の夕食宅配サービスといった、介護保険適用サービスを受給できるようになった。ただ、母親は認知症を患っており、一人暮らしでもあるため、わずか2時間の訪問介護によるケアでは十分な対応ができていない。それをカバーするため、Bさんは週1回の実家通いを続けている。それ以外にも、担当ケアマネージャーから母親の状況に関する電話連絡があったり、短期の病気に伴うショートステイの相談連絡などが入ったりと、仕事と介護の狭間で気が休まることがない。

実はこういう事例は頻発しているにもかかわらず、介護に直接関係したことがない人は、その仕組みや手続き、あるいは家族の対応としてどのような実情があるかを、ほとんど知らない。しかしA社のC社長(65歳)は、実父の介護を経験していたことから、従前から会社の経営戦略として「完全なる両立支援」を打ち出していた。

まず行ったのは、すべての社員へ「介護」に関する意識啓発と周知。D社会福祉法人と業務提携し、介護の手続きや介護保険に関する社員研修、ケアマネージャーを招いての相談会、介護施設での社員の介護体験研修などを次々に実施し、社員が介護を他人事と捉えることがなくなったという。

同時に、社員一人ひとりとの社長面談を毎年実施し、社員の実情を把握したうえで、社内制度の改革を断行。年5日間の時間単位年休制度、両立支援が必要な社員へ「特別休暇(有給)」を時間単位で付与する制度などを導入した。後者は、公的な介護休暇とは別枠の、A社独自の制度である。

一方で、恩恵を受ける特定の社員には、物心ともに支援してくれた他の社員への「サンクスカード」(感謝の言葉を記したトークン)の交付も義務づけた。Bさんもその対象である。多くのサンクスカードを手にした社員は、人事評価で高い評価を受けるというわけだ。支援される社員だけが得するように見える制度に加え、支援をしてくれた社員への非金銭的報酬をフィードバックする制度も併せて取り入れ、社員の一体化を図っている。

特に介護は、気持ちが滅入ることが多いものである。彼らが辛い働き方になっているようであれば、経営者はそれを恥ずべきだ、とC社長は考えている。A社は、それを全社員が一体となって支援することができている。その環境を整備したのは、C社長のリーダーシップに他ならない。

このように、経営者が社員一人ひとりの置かれた環境を理解し、きめ細やかな配慮をしていく。そして恩恵を受ける社員以外の社員への対応も忘れない。このような土台作りにこそ、リーダーは注力しなければならない。土台がないところに、いくら制度を半強制的に導入しても、砂上の楼閣に終わってしまうだろう。最近よく見られる、国が用意した制度を盲目的導入しさえすればいい、という風潮は戒めなければならない。

今回は、介護だけを取り上げたが、A社では「子育て」、「家族の病気」など、他の両立支援も同様子に経営戦略として運用されている。そこにあるのは、社長にとっての文字通り “人財”たる社員、“社会的公器”たる会社への、並々ならぬ思い入れだろう。

株式会社WiseBrainsConsultant&アソシエイツ
社会保険労務士・CFP(R) 大曲義典

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経営者・事業部門責任者から部長・課長・リーダー層まで、経営の根幹を支える人たちの成長を支援するパートナーメディアを目指します。日々の業務に役立つニュースや小ネタ、組織強化や経営理論まで幅広く学べる記事を提供します。

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