
最近、あちらこちらでAI(Artificial Intelligence)という単語を目にする機会が増えた。某テレビ局でAIと共同生活をする設定のドラマが放送されていたのをみて、時代の変化を感じずにはいられない。それだけ私たちの生活に身近なものとなる日が近いということなのだろうか。ただ、最近の単語かと思いきや、AIという言葉が誕生したのは1950年代だそうだ。長い歴史が存在していることに驚かされる。
さて、そんなAIについてであるが、2015年に行われた野村総合研究所とオックスフォード大学の共同研究では、現在ある約半分近くの仕事がAIの台頭によって代替される可能性が高いことを示した。この発表を基にして、人間の担う仕事がAIによって奪われるといった危機感を煽る論調が増えたように感じる。このような記事を読めば、AIという未知の技術だけに少なからず不安を抱いてしまう。しかし果たして本当にそうだろうか。そこで今回は、AIという新技術を前にして私たちはどのように向き合うべきかを、全2回の構成で考えてみたい。
さて、そんなAIについてであるが、2015年に行われた野村総合研究所とオックスフォード大学の共同研究では、現在ある約半分近くの仕事がAIの台頭によって代替される可能性が高いことを示した。この発表を基にして、人間の担う仕事がAIによって奪われるといった危機感を煽る論調が増えたように感じる。このような記事を読めば、AIという未知の技術だけに少なからず不安を抱いてしまう。しかし果たして本当にそうだろうか。そこで今回は、AIという新技術を前にして私たちはどのように向き合うべきかを、全2回の構成で考えてみたい。
AIとは何か
AI(人工知能)は、これまで紆余曲折を経て第三のブームに入ったと言われている。人工知能学会によれば、人工知能の研究は「人間の知能そのものをもつ機械を作ろうとする立場」と、「人間が知能を使ってすることを機械にさせようとする立場」の二つがあるとしながら、「実際の研究のほとんどは後者の立場だ」と述べている。しかし、この人工知能が一体全体何であるのかという明確な定義はまだなく、研究者によっても、その定義付けはさまざまらしい。松尾豊氏(東京大学特任准教授)によれば、現時点の人工知能は、「人間の知的活動を真似ているだけ」で「本当の意味で人間のように考えるコンピューターはまだ実現していない」と指摘し、「人工的に作られた人間のような知能」だと説いている。これらから、AIは、まだ成長過程にある分野だけに流動的な技術であることを窺い知ることができる。
AIで仕事はなくなるのか
では、こうした現在進行形で成長中のAIに、人間の仕事は奪われてしまうのだろうか。これに似た話として過去を振り返ると、1980年代のME (Micro Electronics)化や1990年代のIT(Information Technology)化を想起できる。ME化は、減量経営の際の製造業に係る生産工程の合理化策として、ブルーカラー労働者が有する熟練技能を生産システムとして代替させたものであった。一方のIT化は、ホワイトカラーを含めたあらゆる職種の働き方に大きな影響を与えた。このように、それぞれの時代で、新たな技術が広く社会に浸透するたびに同じような議論はあった。確かに、新たな技術に代替させることで、定型的な仕事が減ることはあったものの、逆に、創意工夫や高い専門性が要求される仕事が増えていったことも事実である。
AIが働き方に与える影響については、日本のAI研究の第一人者とされる松原仁氏の発言が興味深い。同氏は日本が置かれている人口減少社会を踏まえて「日本では『AIが仕事を奪う』なんてところまでいかない」、「労働力が減っていく部分をAIやロボットが補ってくれて、ちょうどバランスがとれるんじゃないか」と述べている。
これらから共通して窺い知れることは、新しい技術の台頭によって、私たち人間の有する「仕事のあり方」が変化しているということではないか。一部では、人間の仕事がAIにすべて代替され、AIによって生み出される新たな仕事さえもAIに取って代わられる、というような乱暴な議論をする論者も見受けられるが、先で触れた中島氏と松原氏の対談においても、人間には当たり前にできることが、AIには苦手とする部分も存在し、残された課題が多いことを指摘している。とても興味深く、素人にもわかりやすく語られているので、是非一読されることをお勧めしたい。(中島秀之(東京大学特任教授)・松原仁(公立はこだて未来大学教授)日経BP社連載記事より)
したがって筆者は、AIが今後広く社会に普及したとして、便利になることはあっても、人間の仕事はなくならないと考えている。いたずらに不安を抱く必要はないのではないだろうか。あくまでAIも「人間が扱う便利なツールの一つ」だという認識を持っておくべきだと思うのである。
【SRC・総合労務センター 株式会社エンブレス 特定社会保険労務士 佐藤正欣】
AIが働き方に与える影響については、日本のAI研究の第一人者とされる松原仁氏の発言が興味深い。同氏は日本が置かれている人口減少社会を踏まえて「日本では『AIが仕事を奪う』なんてところまでいかない」、「労働力が減っていく部分をAIやロボットが補ってくれて、ちょうどバランスがとれるんじゃないか」と述べている。
これらから共通して窺い知れることは、新しい技術の台頭によって、私たち人間の有する「仕事のあり方」が変化しているということではないか。一部では、人間の仕事がAIにすべて代替され、AIによって生み出される新たな仕事さえもAIに取って代わられる、というような乱暴な議論をする論者も見受けられるが、先で触れた中島氏と松原氏の対談においても、人間には当たり前にできることが、AIには苦手とする部分も存在し、残された課題が多いことを指摘している。とても興味深く、素人にもわかりやすく語られているので、是非一読されることをお勧めしたい。(中島秀之(東京大学特任教授)・松原仁(公立はこだて未来大学教授)日経BP社連載記事より)
したがって筆者は、AIが今後広く社会に普及したとして、便利になることはあっても、人間の仕事はなくならないと考えている。いたずらに不安を抱く必要はないのではないだろうか。あくまでAIも「人間が扱う便利なツールの一つ」だという認識を持っておくべきだと思うのである。
【SRC・総合労務センター 株式会社エンブレス 特定社会保険労務士 佐藤正欣】
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